至福-Rapture-

                   作 Ishmael 訳 Aki Mizusawa

 最悪の時が過ぎ去るまでの間、カサンドラ・ローゼンバームが聞くことができた音のすべてはミツバチのブンブンいう音だった。絶叫と混乱の極み、それは蜂達の翼の絶え間ないうなりによってかき消された。
 群れの白い雑音はだんだんと微かになり、カサンドラの耳にはついにそれらの騒音は聞こえなくなった。1時間程静かに座った後に、幼い少女は魔界の彼女の村がどれほど蹂躙されたかを見るために、彼女の家の隠し部屋からはい出た。

家は略奪されていた。しかし空っぽではなかった。手をつけられなかった唯一の空間は、彼女が隠れていた隠し扉の向こう側のコーナーであった。
 しばしの間、そこはソウルビーの襲撃に対して彼女を隠し通すことに成功していた。
 彼らの土地の領主がデミトリ・マキシモフであり、カサンドラが魔界の少数の人間の村の初々しい少女であればこそ、闇の世界のとりわけ不快な要素から彼女を隠すための場所が、特に必要だったのだ。

カサンドラは両親を求めて叫ぼうとしたが、彼女の声はのどにへばりついた。窓へ静かにじりじり向かって、彼女は村を眺めた。
ほとんど満月に近いとはいえ、月の光しかないのでは何も見えないに等しいが、他の家の輪郭はそれが荒れ果てている事を示していた。
彼女は、外に出て彼女の村に何が起こったかを見なければならないと思った。
 たとえ何を見いだすかもしれないかが、怖かったとしても。

最も近くの家を点検するために物影から物影までこっそり動いた後に、カサンドラはひとかけらの有機物も村に残されなかったことを悟った。
食物、草のすべての葉、田園の中の農作物と家畜のすべてがすでにソウルビーによってあまさず運び去られていた。それは同じく、彼女の親を含めての、村でのすべての人が群れに飲み込まれていたことを意味した。雨樽の後ろに隠れて、彼女がどれほどのものを失ったか悟り始めた時に、カサンドラにできる最善のことは、泣いて自分を窒息させることだった。
 これはジェダが世界にもたらしたものなのか?

二週間ほど前にはカサンドラは本当にはジェダを信じていなかった。
彼女は生活の中ですでに闇の救世主の物語を聞いていた。それらは常に迷信で覆い隠されていたが、それは魔界のような神話じみた世界について多くを語っていた。
ジェダのに関する言い伝えは彼が世界を作り直し、世界を救うためにいつか魔界に復活する不滅の者であると言っていた。けれどもそれは子供たちを怖がらせる意図で、ジェダの実際の脅威よりも誇張された姿のように思われた。彼女がもっと幼かった時、カサンドラは何度か「日々の雑事に追われるか、ジェダがあなたのために来るか」という一節を聞いていた。
さらに魔界へのジェダの帰りをテーマにした伝承童謡があった。

    「ジェダがある日戻って来る前に、
     道を示す3つのしるしがあるだろう。
     最初は頂上に訪れるだろう、
     二番目が土地を覆い尽くすだろう、
     そして三番目が彼の援助の
     驚異について告げるだろう。」

 けれどもそれらが子供たちのゲームの拍子をとるために使われ、キャンプファイアーの周りで話され、時に吟遊詩人によって演奏されたにも関わらず、ジェダの物語は常に恐怖の感覚で話された。ジェダは救済を魔界にもたらすだけでなく、同様に審判を下そうとしているだろう。物語は魔界で最も恐ろしい魔物さえジェダを少し恐れているかのように語った。
 だが、魔界の驚異と恐怖に囲まれて一生を送ってきたカサンドラが、どうやって魔物どもを怖がらせた誰かを信じることができたろうか?

 それはリリスが魔界に来た時変わった。
モリガン・アーンスランド、アーンスランド家の新しく、まだ試されていない当主がリリスにとり憑かれたという噂は野火のように世界の果てまで広がった。それはそれ程までに早く庶民に広がったので、噂はただ魔界を支配するアーンスランド家が完全な混乱状態にあるとを伝えただけだった。
さらにリリスが現実のジェダの前兆、彼がこの世界に戻ったという最初のサインであったということも噂されていた。
この世界が絶え間ない戦争状態に突入することを阻止した一族が内破している今、何が魔界に起こるであろうかと庶民が思っている間に、ソウルビーは来た。

ソウルビーの小さな縄張りは長く魔界のはずれで存在していた、しかし今その働き蜂が魔界の心臓部に押し寄せていた。
村人が接近中の群れを戦闘で撃退する準備をしている間に、村の託宣者はソウルビーがジェダの帰りの2番目のサインであり、世界の全てが間もなく破壊されるであろうと宣言した。

 カサンドラはその時はまだ託宣者を信じていなかった。
 託宣者はしばしば間違っていただけでなく、彼女の予言が信じるにはあまりにもひどいものだったからだ。カサンドラは今こそなぜジェダについての物語がそれほど脅かすようであったか理解したが、彼女はまだ自分が草一本ない不毛地帯にいるという事態に対しての、心の準備は出来ていなかった。
 カサンドラは雨樽の後ろに座って、親や他の親しい人達の誰にも、もう二度と会えないのだと思い、静かに泣いた。
 村の人々について考えている間に、カサンドラは突然、父親によって彼女と同様に、隠ぺいスペースに入れられていた、カサンドラの他に唯一の村での13歳の少女であるスーザンはどうなったのかと思った。手早く涙をぬぐい去り、カサンドラは彼女の身の安全を無視して、スーザンの家に向かって舗装されていない道路を急いで下って行った。

残骸のまき散らされた床の上を注意しながら進み、スーザンの隠し部屋が位置していたところに、カサンドラはたどり着いた。
 隠し戸は壁の外に引き裂かれていた。しばらくの間その部屋を覆い隠したドアの枠は崩壊に伴って起きた、炎の爆発に焦がされていた。部屋の内側は同様に略奪されていた。すべての乾燥された穀物とともにスーザンは運び去られていた。
 カサンドラは彼女がソウルビーの攻撃を切り抜けた唯一の人間ではないかと心配し始めていた。
 彼女独りで一体何が出来るだろうか?

「ほう、喜ばしいことに私の小作農の1人が生き残ったか」
デミトリ・マキシモフが彼女の後ろに出現し、その声が高く響きわたった。
デミトリを見て、カサンドラは恐れで金切り声を上げ、もはや彼女を守る役目を果たさないスーザンの空の隠し部屋から逃げだした。デミトリは気軽にその腕をつかみ、彼女が死に物狂いにもがくのを見て、楽しげに笑った。数秒の後にデミトリはいたいけな少女をぐいと自分に引きよせ、
「もし君があがくのを止めるなら、少しだけ長生きできるだろうがね」と言った。 自分が多くの選択肢を持っていなかったことを悟って、カサンドラは弱々しく自身にデミトリに曳かれることを許した。

吸血鬼は家からカサンドラを引きずり出し、彼女を土の道路の上に投げ出した。「君はソウルビーが押し寄せた村で、食い尽くされなかった唯一の人間のようだな。彼らは私の城をほとんど壊滅させさえした。私は自分の下僕達が無分別な蜂どもの群によって殺されない程度には、有能だと考えていたがね。」
デミトリは人生における衝撃的な損失が彼にとっては、ちょっとした生活上の不都合でもあるかのように冷静に見ていた。

「私がベリオール・アーンスランドが存在しないのを残念に思うとはな。だが、少なくとも、ジェダが最初に気が触れた時、その老王はジェダをおさえられた」
デミトリは「それから、ジェダの死を宣言することにおいて、ベリオールは早計であったようだ」と、深く考え込んだ。

カサンドラは、走ろうとするにはあまりにも疲れ切り、怯えていたので、座ってデミトリの話に耳をかたむけた。彼女はデミトリがどんな種類の聞き手でも、村娘さえ探していたのだろうと思った。実際デミトリの聞き手となることが、彼女に起こりうる他のことより少しはましだったことは確かだろう。
「私は彼女が相続した王座からモリガンを退位させる用意を整えていたが、ジェダはすでに彼女を処分した。
 素晴らしい。もしかするとジェダはベリオールの娘が今までそうあったよりも私の力に立派に対抗する者であるかもしれないな。
 だが、いつ彼はその姿を現そうとしているか?」
デミトリは考え込んだ。
「もし私が彼に対峙したら、私は最終的に皆に誰が実際に魔界の未来を形づくる者であるか示すだろうがね」

カサンドラは何か言いかけたが、彼女自身を抑えた。デミトリはしかし、彼女の顔の上にためらいが揺れるのに気がついて、注意を彼女に向けた。
「君は何を言おうとしたのかね?」と彼が促した。
自分が今ソウルビーの攻撃の最中よりも危険な状態にあることを悟り、カサンドラは
「彼は3番目のサインを待っているのでしょうか?」と、ささやいた。
「迷信的なたわごとだな」 デミトリはクックッと笑った。
「私はまだ愚民達がそんなことを信じられるのかと驚いたよ。ジェダ、自称「闇の救済者」は自分の嘘を信じる狂信者以上の何者でもないね。
彼は無分別な昆虫の一団による攻撃が私を打ち破り、私の領土を混乱させると考えたか? 私は蜂の狙いが私だけだと悟った時、何も重要な物を失わずに、彼女らをかわすために私の城を去り、安全そうな私の領地の辺境地帯であるここに向かった」

カサンドラの顔にショックを受けた表情が浮かぶのを見て、デミトリは冷笑した。 「君はジェダが君の村のような下賎の者達の暴徒による被害を気にすると思ったか? ジェダはただ彼に対抗する可能性のある強者を確実に潰そうとしているだけだな。
 もし彼が勝者となれば、どんな支配者に対してもするように、弱者は彼の足下にひれ伏すだろう」

「もし、ジェダが彼がこれらの攻撃で私を弱めることができたと思うならば、間違いだな」とデミトリは、彼が無事であったことを証明するために彼のケープをわきに広げてみせて続けた。
「それはただ、魔界のすべてが私の支配の下にあるべきだという私の決意をさらに強めただけだ。ジェダを倒した後、私は最終的に魔界の全てを手に入れるだろう。そして私は誰が生き、誰が死に、そして誰がただ使われるかを決定する者となるだろうな」
 とデミトリがカサンドラの首をつかんで、ぐいと引き寄せた。

「蜂どもをかわした後に、少し喉が渇いていることを認めなくてはならないだろうな」とデミトリが言った。彼の顔が歪み邪悪な笑みを形作る。
「しかし、私は君の血を最後の一滴まで飲み干すつもりはないがね。さもなければ、君には楽しめるものはほとんど残されていないだろうが」
 カサンドラは金切り声を上げようとした、しかしそれはただ咽をゴロゴロ鳴らす音として出てきただけであった。

 カサンドラは目を閉じて、最悪の事態を待った。
数秒の静寂の後に、彼女はおそるおそる片目を開いた。
デミトリはまだ彼女を腕の中に捕らえていたが、彼の注意は道路の真ん中の平凡なスポットに集中されていた。一見何もない場所を凝視し続けて、彼は低い、凶暴なうなり声を漏らした。

カサンドラが気付いた最初のものは、ゆっくりと高まりはじめた空中の静かな、かん高い音であった。
凍り付くような冷気の突風と微かな穴から漏れる光を伴い、何かが出現し始めたとき、デミトリの声は、激怒のうなりに変わった。 

 もはやカサンドラに注意を払わず、背の高い細身の影が渦巻く冷たい空気と光の中に形作られるのを、デミトリは見守った。
空中の音は大きく深く響きわたり、魔界が若かった時の古き言語での朗々たるコー..ラスとして聞こえだした。
 鋼の翼を広げた影は、あえて彼の脚を卑しい地面に触れさせず、宙に浮いたままで、彼を包む氷の薄い繭を粉々にした。影が彼の目以外の顔立ちを覆い隠し、光がその背後から放射状に広がった。
 知性と嫌悪に溢れた目。
デミトリを見つめる目。

「ジェダ ・・・」
 デミトリは首を締められているかのように、その名を発音した。
 そのヴァンパイアが自身の肉体をゆらめかせて変身し、彼の強敵を凝視したとき、エネルギーの神経質な、制御されていない奔流が彼の全身を流れた。
デミトリは無意識にカサンドラの首を握り締め、地面に彼女を背中から落とす前に、一瞬で鈎爪に変わった彼の手の鋭利な爪を、少女の首に食い込ませた。

 息をあえぎ求めつつ、カサンドラは彼女の切り傷だらけになった首をつかんだ。 血が指の間から吹き出し、彼女は冷や汗にまみれて身震いした。
彼女はデミトリがジェダに何か叫んだが、それが響きわたるコーラスによってかき消されるのをかすみはじめた目で見ていた。
 いかなる合理的な攻撃をも避けて、デミトリは光輝く雲の中に猛烈に突進した。 彼がジェダの間合いに入った時、デミトリはダークセイヴァーの肩に噛みついた。
 デミトリが貪欲に飲むにつれ、紫の血が傷口からザーザーと流れた。
表面上無関心にジェダがゆっくりと長く薄い片手を引き上げて、容易にデミトリを払いのけた。
ジェダの高貴な、不死の血が燃え、それが彼の体から離れたあと、何歩かよろめき歩き、デミトリ・マキシモフは地面に倒れ、痛みでもだえ苦しんだ。
 響きわたる非人間的な合唱の音が彼女の耳にこだまし、目は闇の救世主から放たれる輝きで満たされた。カサンドラは最後に大きく息をついて、彼女の目を閉じた。


 生きてるかもわからない曖昧な意識の中で、カサンドラは遠く微かに叫ぶ声を聞いた。声は急激に大きくなり、いっそう明白になった。
「ほら、 レイレイ! これを見て! 彼女が気がついたわ!」
 まばたきして、彼女が最低限の装備の自動車の助手席で休んでいたのに気づき、カサンドラはゆっくりと再び目の焦点を合わせた。
黄色の服を着ている少女が彼女を覗き込んでいた。
「 うう・・・」
「しーっ、楽にして。動こうとしてはいけないわ」と少女が言った。
「あなたの隠れ場所の上に使われていた呪文は裏目に出て、あなたを本当に奇妙な眠りの中に置いていたの。あなたは恐らくソウルビーがあなたの村を攻撃した時から今まで仮死状態だったのね。呪文が途切れたおかげでは私たちはあなたがそこにいると気づいたのよ。さもなければあなたが恐らくまだあそこにいたでしょう。
もちろん、あなたはしばらくの間少しふらふらするでしょうけど。
 ああ、ところで私の名前はリンリンというのよ」
 と彼女はカサンドラを元気づけるように微笑して言った。
「私達姉妹は様々な有害な物を掃除するのを手伝うために雇われたの。先週魔界を襲った混乱がもたらしたものをね」
 カサンドラが頑張って質問しようとした時、彼女は誰かが近づいてくるのに気がついた。
頭を回して、カサンドラは若いキョンシーが彼女が寝かされていた自動車に歩み寄ってくるのを見た。キョンシーの後ろに、魔界の日光に照らされて、ほとんど穏やかにさえ見えるカサンドラの村があった。

「私は村の残りをチェックしたよ」とキョンシーが言った、
「そしてそれはきれいだね。ソウルビーがすべての物と人を持って逃げ去ったように見えるよ。ハッキリとはいえないけどさ」
「 レイレイ!」
 カサンドラに向かって彼女の頭をぐいと動かすと、リンリンは「シーッ」と言った。
「おっと、ごめんね。えーと、たぶん私たちはすぐ動くべきだよ」と レイレイ が言った。
「もし私たちがその子をたそがれの前に安全な所に連れて行くつもりなら、今すぐそうしたほうがいいアルよ」
かろうじて意識があるカサンドラを見て、レイレイは
「私はこれが私が後部座席に乗り込んでいるってことだと思うアルよ」
 と、付け足した。

 双子は自動車の後ろに牽引されていた棺の中にレイレイを慌ただしく詰め込み、リンリンは何が魔界に起きていたか説明した。
「それらは別にジェダの再帰ではなかったように思えるわ。
 ソウルビーを彼女らの故郷から追い出した人口過剰。
そして、アーンスランドの女王を攻撃したその夢魔。
 彼女は実際には何世紀か前にわかたれて、とうとう自由になった彼女の過剰な力だったの。 私はモリガンの父親が魔力が自身の人格を持ち、彼女の後を追うと考えていたかどうか疑っているわ。故ベリオール・アーンスランドのが逝ったあとでさえ、混乱をもたらす彼の遺産はまだ存在しているように思うの。
私は同じく彼の行動がオルバスを魔界の王位に近づけるのに、役立とうとしているなんてことまで、彼が考えたかどうか疑問だわ」

 ジェダは帰ってはこなかったか? カサンドラは話そうとした。しかし声はただわずかなうめきとして出てきただけだった。
「ええその通りよ、私は同じ様にマーマンの一族の1人の選択にびっくりしたわ」 カサンドラが何を言おうとしていたか誤解して、リンリンが答えた。
「けど、彼は本気でしょう。仕事ぶりについては非常に上手くやるでしょう。少なくともモリガンが今までにしたことよりは良いでしょうね。
 彼は賢明な判断をして、嫌らしい者達を片付けるのを手伝わせるために私たち姉妹を雇ったわ、そして蜂達は逃げた、このことはすでに彼が1点稼いだと言う事ね」

「王座への野望を抱くデミトリが、再びアーンスランド家に挑戦しようとしていたから」
 とリンリンが棺を固定するための皮ひもを再点検しながら続けた。
「これらすべての災いは結局は良い方に転ぶ不幸だわ。
 もちろん、私はあなたの村に起こったことが良いと言っていないわよ」
 リンリンはす速く加えた。
「今回の事件はデミトリが1世紀前にベリオールに挑戦した時以来の巨大な血の浴槽を造ったわ。最終的にその戦争を止めた唯一のものはジェダの攻撃だった」
棺のふたが内側から閉まる時、リンリンは彼女の妹に軽く手を振った。
自動車に向かいながら、リンリンが言った。
「私たちはあなたを最も近くの難民センターに連れて行くつもりだけど、それでいい? 彼らは私たち姉妹よりもずっとあなたの助けになってあげられると思うの。
もしかしたら、そこであなたは何人かのあなたの村の人達を見つけることができるかもしれないわ」
リンリンは彼女を元気づけようと、もう一度微笑んだ。

リンリンがひとけのない未舗装道路を車で下り、カサンドラが馴染んだ唯一の家から離れていく時、若い少女は起きたすべてについて考えた。
彼女はデミトリだけでなく、伝説的なジェダにも遭遇したことをただ、夢見ただけなのか?
彼女の傷一つない首は、同様にそれが隠し部屋で見たただの夢であることを示していた。
 しかし、夢だという証拠があったとしても、それを信じるには彼女の体験はあまりに生々しすぎた。

 ジェダが彼女を救い、隠し部屋に彼女を入れたのか?
 そうだとしたら、なぜか?
 彼女は予言の3番目のサインなのか?
カサンドラの頭の中である考えが形をとりはじめた・・・彼女は闇の救世主が彼女に望んだことは何なのかを理解しはじめた。
 ジェダは第一のサインであるリリス、第二のサインであるソウルビーを使い、今まさに魔界を内戦によって、ばらばらに引き裂こうとしていたアーンスランド家とマキシモフ家の両家を破壊した。
もし、魔界が今再び百年前の戦乱のような危機にあるならば、彼女はジェダが秩序を再建するために復活するだろうと思った。
ジェダが魔界を救うために真の復活を遂げるまで、彼は闇の領域の永遠の守護者として、監視を続けるだろう。

 ちょうどジェダが魔界の救済者として選ばれたように、魔界を自滅から救おうとする彼の真なる願いを広めるために、彼女は自分ががジェダの宣教師として選ばれたことを悟った。
彼女が難民キャンプについた時、ジェダの最も新しく、若い使徒はこれからの彼女の人生が前とどれほど異なったものになるだろうかということに、思いを馳せた。

 終



2000.8.14. up

http://www.yuzuriha.sakura.ne.jp/~akikan/GATE.html

原文はこちらです。

http://www.geocities.com/TimesSquare/Ring/3845/