終わらない夏      作 私は殿下
終わらない休暇


円形の窓の外 白く輝く綿雲の合間から紺青色のインド洋をながめながら、瑤子と雅代はフライトアテンダントが持ってきた食後のコーヒーをすすっていた。



「瑤子、明日 店に出るの?」



「いや・・・明日まで休んで、また辰彦に頼むの・・・これで休暇は完璧だわ。」



「ったく瑤子も好きねえ・・・身体の自由奪われてどこが楽しいの!アンタも変わった趣味持ったわね。」



「何言ってんの、雅代も1度やってみなさいよ。 やみつきになるわよ、絶対に・・・陽介に頼んだら!・・・フフ、駄目だったら、辰彦 貸すわよ。」」



「・・・ごめんこうむる・・・」



「雅代ねえ、人の好意は素直に受け取るものよ・・・知らなかった世界が広がるのにね・・・」



「アンタ、馬っ鹿じゃないの!そんな世界なんて知らなくてイイの!」



瑤子と雅代は、モルヂィブから成田に向かって飛行中のエアバス340のビジネスシートに座っていた。二人とも27歳の独身。東京モーターショーのコンパニオンの時に知り合ったのだ。

引退して2年前から、小さなブティックを共同で経営しており、今回は仕入れを兼ねた久しぶりの旅行である。



「細黄和子の本によれば、私の星座は天王星人のエリア。 天皇星人てセックスも自由で享楽的で変態でもなんでも追及しちゃうんだってさあ。当たってるって思わない?・・・雅代は何かな?・・・ひょっとして水星人?・・・性格冷たいもんね」



「声大きい!・・・知るかよ そんな・・・辰彦はなにかなあ。」



「あれはね、たぶん土星人よ・・・私の奴隷・・・命令に逆らったことない。・・・まあ、首にするぞって脅してるからかも知れないけど。」



陽介は雅代の彼氏である。しかし辰彦の方は、おもて向きは従業員として使っているが、実際はくそ真面目で従順、というよりちょっとお馬鹿なので、瑤子が自分の性の奴隷として仕込んだ男である。



コンパニオンの傍ら水着フアッションショーのモデルをやっていた瑤子は、どちらかと言えばボーイッシュ系のセクシーさを持ち、脚が長く鞭のような身体つき。学生時代に陸上競技で鍛えたバネのある引き締まった筋肉が自慢である。特に引き腹筋とヒップから太もものラインはマネキン人形そのままで、2年前までカメラ小僧達の垂涎の的であったのだ。

実際瑤子は、店で扱う、身体のラインが出るノースリーブに美脚ジーンズを履きこなして店に立ち、女性客に購買欲を駆り立たせるばかりか、店を出れば、ヒップやレッグラインにすれ違う男女の視線を集めさせていた。まさに動くマネキン人形のようなプロポーションである。









(2)

瑤子は、背中や腰の露出したアーミー柄のキャミソールを脱ぎ、そして、脚のラインに吸い付いた美脚ジーンズを腰からずり下ろして、足を抜いた。

黒地にパッションピンクのパイピングを施した、ミニマムなTバッグショーツ1枚になった。スパンテックスの極薄な生地が瑤子の股間に、あたかも肌と同化してるようにピッタリに吸い付いている。

髪を‘遊戯’の邪魔にならないよう、クリームでソリッドになでつけ、ゴムで後ろに纏めた。

側頭部の髪がピタリと頭にはりついて耳が露出し、顔の輪郭がハッキリした。余計な装飾を抑え、瑤子の頭髪から足先まで彼女特有のボーイッシュ気味なセクシーさが際立つ。



「ちょっとクーラー効き過ぎ!・・・寒いわ、しばらくスイッチ切って!」



辰彦はというと、皮膚に傷をつけないよう内側を加工した4つの生皮色の拘束具と、大きな南京錠、2つの枕、筆やバイブレーターを無造作に床に並べた。



瑤子が縄を使わない理由は3つある。皮膚に痕や傷が残ってはならない。拘束がシンプルで辰彦に指示しやすい。そして、拘束されている自分の状況が把握できる。



「じゃあぁ やってよ・・・」



瑤子は、甘さを帯びた命令調で言いながら、正座し、胸を反らして両腕を背中にまわした。

正座した太ももが、小作りの膝頭に向かってスポーツカーのボンネットのようにしなやかな曲線を描き、くびれたウエストとTバックのヒップが、足の指に乗っている。

弦楽器のフォルムを連想させる、あの女体の美しさ。



「はい 店長」



辰彦は瑤子の背後にまわると、鋲のはまったSM用の首輪をはめ、アイマスクを瑤子の眼の上にあてがい後頭部でストラップを絞めた。瑤子の視野が暗黒になった。

次に、両の上腕を掴んで背中の中央にグウッと引き寄せた。

反動で瑤子の胸が前にせり出、肩甲骨の筋が盛り上がる。

辰彦は左手で左右の肘を固定すると、右手で瑤子の肘上の上腕に拘束具を被せて巻き、3本のベルトをストラップに通して次々にギュギュッ と引き絞っていく。

ギチッと肘同士がくっつき、肩関節が後ろに引っぱられ大胸筋が張り、背筋が反った。 思わず顎が上がる。  

ちょっと苦しい・・・。



・・・ああ、キツイ・・・この感触が、たまらないの・・・



アイマスクをはめた暗黒のなかで、瑤子は胸のなかでつぶやき、高まる期待に唾を飲み込む。



・・・何度やっても、喉が渇くような、鳩尾の奥の方がチリチリするような感触がする・・・たまらない・・・ボンデージはじめてもう10ケ月なのにこのドキドキ感は新鮮なまま・・・私、もう、一生止められない・・・



辰彦は瑤子の後ろ手の両手首をひとまとめに握ると、拘束具を巻き、ストラップで絞める。



「もっ・・・もっと絞めて・・・絞めていいのよ・・・」



瑤子は辰彦に支えられながらゆっくりと横になり、そして俯きになった。

辰彦は瑤子の足首をクロスさせるとそのまま拘束具を装着した。



Tバックショーツ1枚だけで、うつ伏せに寝た、腕と足首を拘束した美しい女体。

広めの肩幅、贅肉の無い脊柱筋、形の良い尻からしなやかに伸びた美脚を視ながら、鎖骨の下と膝の下に枕をあてがう。

身体が、やや反った。 

そして未だ伸びていた膝を深く曲げ、手首と足首の拘束具のフックを重ねると南京錠で固定した。ホッグタイという名の拘束。



「辰彦! いつも言うことだけど、絶対に私のショーツ外しちゃ駄目よ!・・・ショーツの上からタッチして・・・本番も絶対駄目・・・この不景気、アンタを首にするなんて簡単なんだからね!・・・じゃあギャグを咥えさせて・・・さあ、してぇ・・・やさしく、よ・・・。」



辰彦はアイマスクをさせた瑤子に、犬が骨を咥えるような形のギャグを咬ませた。太く固めのスポンジ状で、痛くないので購入したが、ソフトな感触のかわりに口腔に大きく食い込み声と口呼吸を奪う。が、なんと言ってもこの形は嗜虐的だ。

美脚・美尻ジーンズを格好良く穿きこなして大股で颯爽と歩きまわり、格好良く接客するブティックの販売員の美しい姿から、いったい誰が、こんなにも淫靡な遊戯に取り付かれたこの女の本性を想像出来よう。SM用の鋲の打たれた首輪をはめ、顔の輪郭がハッキリした美しい形の頭に、生皮色のアイマスクとギャグが無残に大きく口に食い込み、ソリッドな頭の美しさに、相反するゴツいギャグの無残さが加わるこのギャップが、えもいわれぬ嗜虐的なエロチズムを滲ませている。



鎖骨の下の枕を抜き、そして静かに、膝の下の枕を抜いた。



キリキリッ ギチッ



「・・・ん・・・んう・・・・・・・・・」



枕を抜くと、フックが摩擦して革が鳴く。身体が反ったまま、枕の高さに、胸と膝が浮いた。



辰彦は、かすかに反り上がった瑤子の両脚を、69の格好で横寝になって抱きしめると、膝頭を、鼻先と唇で愛撫しはじめた。

反って引っ張られた皮膚が、敏感に反応する。



「・・・!!・・・・・・・・ん・・・うっ・・・・・・」



絵筆を持つと、毛先を、瑤子の足の指に触れさせ、繊細なタッチでくすぐってみる。

首筋から肩、たわめられた背筋の、若い女性の証の金色をしたウブ毛に微かに触れるようなタッチに、ギャグの下から吐息混じりの甘い声が漏れはじめる。

毛先が、尾骨から仙骨の性感帯をまさぐる頃には、瑤子のショーツの下は陰唇が開いて愛液がにじみ出た。



今度は横倒しにすると、筆を置き、右手にバイブレーターを持ち、太ももを、膝から逆海老のためむっくりと突き出た陰部にむけてゆっくりとさすりながら、乳房に舌を這わせ、硬くなった乳首を舌先で転がしては、軽く噛んだ。



「あぁっ! うっ ううっ!」



瑤子は拘束具をギチッ ギチッ と鳴かせながら、海老反った不自由な身体をよじった。

辰彦はバイブレーターを床に置くと、猫がねずみをいたぶるように、乳首を指で挟んで転がし、もう一方の手のひらを反らしては、指の腹で陰部をさすりながら、今度は首筋やわき腹に舌を這わせる。

おへその穴に舌先をねじ込んだ時、隠しようのない瑤子のショーツにシミが広がった。



・・・お願い・・・そのまま後ろも・・・前と一緒に後ろも擦って・・・二穴してえぇ・・・瑤子たまらないの!・・・もっと!・・・



淫乱な願望を心で叫びながら、頭を思い切り仰け反ると、首の静脈を青く怒張させて身を揉む。



40分ほど経った。

瑤子は首を縦に振って終わりのサインを送る。



「店長、ヨガで弓のポーズというのがあります。ホッグタイと一箇所をのぞいてほとんど同じポーズです。性腺を強く刺激して美容や性感のみならず、より強いフェロモンも分泌されます。・・・ちょっとやってみますね・・・」



言い終わらぬうちに、いきなり辰彦はうつ伏せの瑤子の頭の上にしゃがむと、片手に南京錠を握り、両手を伸ばして足首の拘束具をつかむと手前に引きつけ、手首ではなく、なんとそれを肘上の拘束具に接続しようと奮闘しはじめた。

太ももは床からはがされ、ちょうどプロレス技の逆海老固めの体勢になる。



「ふおおおっ!  ふうっ んうっ! んうっ! んうっ!」



驚きで、瑤子はギャグの下から呻き声を出して身をよじってもがきだした。



なかなか拘束具同士がくっつかない。

いったん脚を伸ばすと再び力任せにひきつけた。片手を瑤子の開いた脚のあいだに入れると強引に股を開かせる。

ジタバタともがく瑤子の太もものセクシーな内転筋が、もがく度に、いやらし気なフェロモンを撒き散らしながら恥骨の付け根から引き攣れて盛り上がる。

辰彦はそれに負けず、さらに力を出して引きつける。

まるで倒れたヨットの帆を立てるかのような奮闘。太もものみならず、陰部も、腹も床から離れ、鎖骨だけで海老反り逆立ちするような体勢になった。

腰が痛い。大腿四頭筋が引き攣れる。驚きのあまり瑤子は、手のひらを拡げて悲鳴を上げる。



「あぐうううう!! うっ! ひぃっぐうううっ!!」



「暴れないで!・・・ジッとしていて下さい」



辰彦は、今まで聞いたことの無いような悲鳴を搾り出す瑤子にたじろがず、声を出した。

女体が軋みながら反りを増して、ジワジワと拘束具同士が接近し、肘上と足首の拘束具のフックが重なった瞬間、すばやく南京錠を通してカチりと止めた。



立って腰をどけ手を離すと、逆立った瑤子の身体は、反動で揺り篭のゆり戻しのように上体をグンと上に振り上げ、ゴロンと腹と太ももが床に着き、再び太ももが床から離れる。足先と後頭部がもう少しでくっつき、胸とふとももを高々と反り上げ、へそだけで立った。



ミニマムTバック1枚だけを身に着けた美しい女体は、たった3つの拘束具だけで、股を大きく開き、厳しい逆海老に拘束され自由を奪われてしまったのだ。髪を詰めた美しい頭にギャグを犬のように咥えた異様さで、何かわめきながら己が女体をグラグラと揺らしている。



手首はクロスした足首の下側に入って向こう側につき出ている。

辰彦は突き出た手首拘束具のフックを、足首の甲側のフックに重ね、南京錠で固定してしまい、手を合わせるようにしてビニールテープでグルグル巻きにした。

首輪のフックを肘上の拘束具に繋げようとするが適当な紐が手元に無く、ポケットから余ったフックを3個つかみ出しそれで短いチェーンを作ると、それを首輪のフックに繋げ、瑶子の髪の束ねたところを掴むと強引に首を仰け反らせ、肘の拘束具のフックに繋げた。呼吸を確保するために絶えず首に力を入れておかねばならない苦しい姿勢で固定してしまった。

そして、瑤子が唯一身に着けていたTバックショーツを、引きちぎって取り去った。

驚いたことに、瑤子の恥毛は下腹部から会陰を通って肛門周辺まで達していて、大陰唇の左側に小さな黒子があった。相的には、性欲が強く淫乱の傾向があると言われている。取り澄ました表情の下に、瑤子はもてあましてしまうほどの動物的な性の激しさを隠していたのだった。



無知ほど恐ろしいものは無いのかも・・・・辰彦はボンデージ術の危険性の何たるかを全く知らない。瑤子から与えられた拘束具だけを用い、瑤子から言われたボンデージしか知らなかったのだから無理もない。

しかし、無知な者の手によって、足先が頭につく、まるでサーカスでやるような強烈なホッグタイで放置され、責められては、たまったものではない。



瑤子は、素っ裸で股を大きく開いて、縦長の汗に濡れた陰毛を曝し、硬くしこった乳首を立て、アクロバチックに反った女体をグラグラさせて、苦しい呼吸でわめいている。元水着モデルやコンパニオンとは思われぬほどの変態さをさらした、このいやらしい姿・・・。



苦しさに加え、瑤子は自分がどの程度の姿勢に拘束されたのか正確にイメージできないでいた。

単にパニックに堕ちたからだけではない。完全にへそ周りの筋肉だけで立ってしまえば、拘束の状況を把握できるという自信はどこへやら、ただただ不安定で、肩関節や腰や脚が痛く息が苦しいばかり、無意識にもがきながら辰彦にやられるままの姿なのだ。 



空調のスイッチを切って時間がたったせいか、瑤子の全身から汗が噴出し、海老反った女体を自ら艶やかに濡らし光沢を与えていく。



・・俺は瑤子が好きだ・・・だからこんな屈辱的な処遇にも耐えた・・・でも、いつまでもこんな事はやれない・・・こんな馬鹿げた遊びがいかに危険なものか、今日、俺は瑤子の目を覚まさせる!・・・



辰彦は瑤子への愛情からそんな考えでいたが、潜在的に愛憎のアンヴィバレンツな感情があった。しかし、もとより性的にはやや奥手で硬派な辰彦が、自由に性を楽しむ瑤子の心理を、自分のものとして理解できるわけがない。



「ふぐっ! んぐっ!ぐっ!ぐっ!ふっ!」



「いかがですか、店長・・・けっこう効けるでしょう! 息もできないくらいでしょ! これから全身の皮膚を叩いて刺激します。かなり痛いですけど美しくなると思って耐えてくださいね・・・」



辰彦はそう言うとクローゼットへ行き、数本のベルトを手に持って戻ってきた。

そのうちの1本を手に持つと、無言のままベルトの先を天井を打たんばかりに高々と振り上げ、振り下ろすと、視覚の無い瑤子の肩口にぶち当てた。



「ひぎいいいいいい!!」



甲高い悲鳴が上がる。



「いあああああ!」



瑤子は突然身体に走る激痛に辰彦の意図を悟り、恐怖にギャグを噛みアイマスクした顔をひきつらせて、イヤイヤと首を振りながら悲鳴を上げる。



次いで脚のスネにぶち当てる。



「ひぎいい!!」



感電したかのように身体がガクンと跳ねる。



辰彦は部屋の隅に滑って行った枕を拾い上げると、枕を瑤子の拘束した両腕と腰の間にギュギュっと押し込んだ。そうしておいて瑤子の身体をひっくり返した。首を思い切り仰け反らせているので、仰向けで安定してブリッジするような、胸や下腹部を突き出して全身どうぞ叩きまわして下さいといわんばかりの格好を取らされている。しかも足首に繋がる首輪のチェーンが、打たれてもがくたびに首輪を引き絞る結果になり、のけ反った瑤子の顔がますます、床と垂直になるくらいまで反り返り、ベルトが巻きついたノドを絞めてひきつれた。

薄くかたちの良い鼻翼が、呼吸を確保するた悲鳴と泣き声の合間にせわしくふくらんだり閉じたりしている。そして 叩け と言わんばかりの格好になってしまう。

さらに、目隠しされているのでどこを打たれるのかわからない。首輪に絞め上げられる美しい喉の筋を、血管が浮きでらんばかりに苦しげに引きかせながら、恐怖にひきつるしかなすすべがないのだ。



ヒュッ  パアーン     ヒュッ  ビシッ  ヒュッ パアーン



「はがああああ!!  ふおおっ!!  はがあああああ!!」      



空気を切る音を発してベルトが、張った乳房の下側に、乳房を上へ跳ね上げるようにぶち当たった。汗が飛び散り乳首がプルルと震える。ベルトの当たった皮膚が赤くなる。  汗の吹き出る皮膚に当たって濡れたベルトの先を手のひらで包むようにしごくと、今度はくびれたわき腹に激突させた。腹に、臍に、そして反って開いた敏感な太ももに執拗にベルトをぶちあてる。太ももの柔らかな内転筋がプルルと震える。

ベルトがぶち当たるごとに美しい肢体をガクガクとわななかせながら、泣き声と悲鳴とを交互に繰り返し、瑤子は全身のいたるところを赤い班に染めていく。



辰彦はベルトを床に投げると浴室へ行き、洗濯物を干すバーを確かめ、そしてベルトを数本持って瑤子の元に引き返す。

肘と足首の拘束具を掴むと引き上げた。



「うっ うっ やえへぇ!・・・」



浴室へ運び、海老反った瑤子を、静かに、タイルの上に置いた。



「もっともっと効果の上がる方法がありますからね、楽しみにしていて下さい。」



ベルトを3本繋ぎ合わせ、それを拘束具の一つに重なったフックに通し、そして瑤子を腰の高さまで持ち上げると、ベルトの端を天井のバーに通して、ベルトの端と端を結んでしまった。

瑤子は 駿河問い という逆海老反りのまま吊られてしまったのだ。



「んんっ!!!・・・ぐっ!!!・・・ううううううう!」



「すごいきくでしょ!? 効果がドンドン上がりますよ! 頑張って下さい」



「ひああっ!んうっ!んう!んう!やへええっ!んう!んう!」



呻きながら、しかし首輪を後ろに引っぱられたままなのでイヤイヤと首を振るこつができない。もがく反動で吊られた女体がギシギシくねり、色っぽく揺らめく。

額の汗粒がが流れ出して、首筋を伝う。



「んう!んう!んうっ!・・・・・・・うううううううう!!」



瑤子の顔が上気したように真っ赤になってきた。まともな呼吸ができないせいだが、駿河問いの苦痛で苦い胃液が喉まで上がってくる。



「やへええっ!・・・ううっ ううっ うっ くうひい!・・・」



「あういお!・・・・ぐうっ・・・おおいえ!うっ・うっ・・・おえあい!・・・」

    

「まだ始まったばかりです。下ろすわけにはいきません。お願いしても駄目ですよ」



「くうひいいい!・・・うっ ぐっ おおいえええええ!!・・・」



「店長、終わった後に飲むビール買うのを忘れていました。買ってきますのでこのまま待っていて下さい。5〜6分で帰ってきます。・・・アノ、交通事故に遭わないよう祈っていて下さいね」



「いうあああ!!・・・おおいえええ!・・・いがあいえええ!!」



辰彦の最後の言葉が、瑤子を激しい不安に叩き落した。



・・・事故なんて万が一にもあり得ない。でも、でももし本当に事故に遭えば、私は誰かから見つけられるまで拷問のまま・・・そんな・・・そんな・・・



そうこうしてる間に5分どころか10分も経過してしまった。

と、遠くの方で救急車のサイレンの音が聞こえ、止まった。



・・・まさか・・・そ、そんな・・・



「だえあああああ!!!」



不安に駆られ、瑤子はついに助けを叫びはじめた。



素っ裸で駿河問いに吊られた美しい女体を、ガクガク揺さぶって、瑤子は脱出しようと死に物狂いでもがきだした。

浴室の温度は蒸し風呂のように暑く、全身の小麦色の肌から汗玉が噴き出ては流れる。







(3)

「あれ見てよ!ダンプが突っ込んでる!救急車も着てるわ!・・・救急車の人が首振ってる・・・死人が出たんだ!・・・・」



「全員死んだのかな・・・ここからだと判んない・・・」



「陽介!あの一番右の救急車の担架に乗ってる男、辰彦じゃない!?」



「ん?・・・・・・ホンとだ!アノ男だ!」



「・・・うっそー!・・・辰彦が死んだ!・・・」



交差点近くのコンビニに4tダンプが突っ込み、店員と客5人が死傷していた。辰彦は死んではいなかったが頭部を打撲し肋骨を骨折して、気絶していたのだが・・・。



「今頃瑤子、辰彦とヤッテル最中じゃない・・・、まだやってなかったんだ!・・・瑤子のマンションに行くわよ!」









その頃、瑤子は駿河問いから脱出しようと汗みどろで苦闘していた。   

しかしアメリカ人の考案したホッグタイはシンプルながら合理的で、主な関節を殺して繋げただけなのに、自力では絶対に脱出できないようになっている。

駿河問い吊られて死に物狂いでもがき続けるすっ裸の海老反り女体が、浴室のすりガラスのドアを透かして見ると、その形から、まるで水中を泳ぐ魚のように揺らめいて見える。

顔や頭の汗は首筋から胸に流れ、もがいて動くたびに、硬くしこり立った乳首からポトポトとタイルに落ち、ふくらはぎや太ももの汗は美脚のしなやかな曲線を伝って、背中や尻の汗と合流して陰毛を濡らしながら縦に割れた腹筋に集まり、臍からポトポトと音をさせて、タイルを濡らしていく。



股を大きく開いた両方のヒップアップした尻肉は、ちぢり毛の生えた肛門から左右にこんもりとした山のようで、汗に光る美しい曲線の山肌が、もがくたびに、プルルと震える。







(4)

雅代ら二人は合鍵を使いマンションの部屋に入ると、枕が無造作に転がり、いたるところがベトついたフロアをソロソロ歩きながら、各部屋を見てまわり、そして呻き声が聞こえてきた浴室に入った。



「・・・!! いた!・・・吊られてるよ!・・・すっげえ海老反りの格好!けっこう激しいことするんだなあ・・・降ろすか・・・」



しかし雅代は、反射的に陽介の腕をつかんで、浴室の扉から引き離すと、口を陽介の耳元に近かづけた。



「ちょっと!・・・ちょっと待って!・・・あなたも見たでしょ! 辰彦は死んだのよ・・・このまま瑤子を放置して死なせればSMの事故死という形になるわ。瑤子が死ねばあの店は私1人の物になる。陽介にも分け前あげるわよ・・・事故で確実に死なせるから手伝って!・・・」



「ええ? お前友達にそんなことすんのかよ!? すげえ女だな!」



「白々しいこと言って! あんただってサラ金の借金チャラしたいくせに! 金 欲しいんでしょ!・・・あのね、浴槽に放置して水を入れていくの エッチ系のサイトで見たことあるわ、辰彦が仕掛けた後で外出して、交通事故で死んだので、瑤子は助けられずにこのまま溺れて事故死するの!」



二人は浴室に入った。



「陽介 浴槽に水をためて!」



そして雅代は瑤子に話し始めた。



「ふふっ、いい格好ねえぇ 瑤子・・・ボンデージだけじゃなくてSMの趣味もあったんだぁ・・・楽しい〜いっ?」



雅代は指の爪を猫の喉をなでる感じで、瑤子の、ベルトの首輪が嵌まってのけ反った喉から顎先に向かってそっと掻きあげる。



「まあよ、うっ うっ おおいえ! ふうっ くうひい! はやう!」



「何言ってんの くふふっ!・・・その苦しさがたまらないんでしょ! 汗びっしょりになってさ・・・こんなに赤くなるまでぶたれちゃって・・・もっと楽しみなさいよ・・・ねえぇ・・・」



そう言いながら、今度は大きく開いた太ももを、膝頭から陰部に向かって爪を立て螺旋を描いて擦りあげる。



「ひがう! まあよ ひがうほぉ! ふうっ うっ くうひい! おへあい はやう、おほいえ!」



「ウソ ウソ だ〜い好きなくせに そんな遠慮しなくていいのよ・・・もっと、もおおっと、苦しくしてあげるねぇ、うれしいわよね、瑤子・・・おおっらあ!!・・・・・・・・・・・」



雅代は、首輪から伸びたフックで作ったチェーンを握り締めると、グイッと引っぱった。



「ひっ!ぐう!・・・んっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



瑤子は首を絞められ絶息し、窒息の苦悶に顔をプルプル震わせる。



「・・・・・・ふっ ふうっうっ ふうっ くっ くっ くうひい!」



「ふふっ 苦しかった? 嬉しいでしょ・・・あれ!・・・瑤子ってこんなところまで毛が生えてたんだ。ド淫乱だったんだねえぇ・・・辰彦に降ろしてもらいなさいよ どぉこ行ったの あんたの奴隷は」



言いながら、雅代の指は、瑤子のクリトリスと乳首を摘まんでクリクリと回してみる。



「・・・・・・・・まあよ!あっ・・・やえへえ!・・・あっ ふぐっ・・・・・・・」

 

瑤子は吊られた女体をギシギシ揺らして、たまらず顎を下げて再び首を絞めてしまう。

 

「・・・あのね・・・辰彦ね・・・コンビ二でダンプに突っ込まれて・・・死んだわよ。・・・さっきサイレンの音が聞こえてたでしょ・・・どうする?・・・このまま辰彦が天国から迎えに来るのを待ってる?」



「うほおお!・・・あっ あっ あああっ あっ」



クリトリスと乳首をコリコリと転がしながら、話し続ける。



「ふふっ、カワイイ声出して、気持ち良いのね・・・嘘じゃないわよ・・・それでね、実は瑤子にも死んでもらいたいの・・・瑤子と辰彦のSM事故、という形でね・・・あの店が私だけのものになるわ。・・・昔どっかのサイトで見かけたことがある。縛ったまま浴槽に放置した水責めプレイ中の事故死というのをね・・・やっぱり天国から迎えにきてもらうのね」



「うおおおおおお!! んうう!んう!くう!んう!んう!」



「そんなに暴れてさ、 いまさら自慢の肉体美を見せつけなくても・・・あはっ、わかった!よっぽど嬉しいのね!・・・じゃあ陽介、瑤子を浴槽に入れてあげて」



「いわあああああ!!ひいいいい!! いああ!! いああ!!」」



「いや? 嘘言わなくていいのよ  瑤子 苦しいの大好きなんでしょ! 汗も引くし、水もいやというほど飲めるわよ、爪に水がしみ込むまで苦しみながら、お腹いっぱいにね。好きなことしながら死ねるなんて最高よね!」



「いわああああ!!ふうほおおうう!! いあああ!!んう!!んう!!やえへえええ!!んう!んう!んう!」 



陽介は、吊ったベルトから瑤子をはずして腕の中に抱きかかえた。

陽介の腕から逃れようと、悲鳴を上げながら身動きできぬ不自由な身体を死に物狂いでもがかく瑤子を、水が半分ほど溜まった浴槽に落とし込んだ。



「んう!んう!ひいいいい!!・・・・・・・・んぶぶっ んぐ んぶぶぶぶ」



ザブンと水が跳ね、恐怖に顔をこわばれせた瑤子は、ギャグの下から泡に混ざった奇声を上げながら、逆海老反りに拘束された美しい肢体を狂わんばかりに躍らせる。   

二人は、浴槽のなかで波を立て、水を飲み、奇声と泡を吹きながら、不自由な身体で踊るようにもがく瑤子をながめると、指紋をハンカチで拭きながら部屋を出て行った。



浴槽の水は半分位しか溜まっていなかったが、逆海老反りに畳まれた長身の瑤子の全身が一度に浴槽に入ったため、水はいっきに満タンになり、蛇口から出る水は浴槽から溢れ出ようとする。



「んぐ んぐ んぐ んぐ ぶほおおお! んぐ んぐ ひぐううう! んぐ んぐ」



ギャグを噛んだ口から容赦なく水を飲まされながら、死に物狂いでもがきつづける。が、瑤子はある瞬間かろうじて空気を吸い込めることに気がついた。

逆海老縛りがあまりに厳しいせいか、ジッとしていれば目の高さまで水面下になるのだが、思い切り仰け反って、さらにもがいて揺り篭のように前後に身体を揺さぶれば、頭が上へ上がった瞬間、鼻が水面から出るのだ。だが次の瞬間には顔全部が水中に没してしまう。

瑤子が溺死せず生きようとすれば、絶えずもがいて揺り篭のように揺り続けなければならないのだ。



「ひぐううう!・・・ひぐううう!・・・ひいいい!・・・・ぶおおお!・・・」



ゴムで束ねた髪はほどけてはいないが、前髪がほつれて額やアイマスクのところにべたりとくっついている。

瑤子は死に物狂いで身体をゆらしながら、ビニールテープを巻かれた両手の指を解こうとして、手の甲の筋が盛り上がるほどに力を入れる。

浴槽の栓を抜こうとしているのだ。許される範囲で、と言っても1センチくらいだが、ビニールテープの中の両手をこすり合わせるようにして、解こうとするのだ。

しかし、10分 20分 と時間がたち、もがきが次第に瑤子の体力を奪ってきた。

だが、もがきを止めれば空気を吸い込むことができず、溺死してしまう。

苦しさに耐えて半泣きのうめきを上げながら、必死にもがいて鼻を水中から水面をあげるのだ。







(5)

辰彦は、眼が覚めると事故現場に近い病院のベッドに居た。



・・・ここは?・・・はあっ、しまった!・・・



意識を取り戻した辰彦は、ハンガーにかけてあったジーンズのポケットから財布とキーを取り出すと、フラフラしながら、病院着のままスリッパで入り口に走り、受付の女性の声を無視して外へ出た。



・・・マンションを出てから1時間近くも経ってる・・・



客待ちの運転手や通行人達が、病院着でヨロつきながら走る辰彦を訝しげに振り返る。

気が遠くなるような朦朧とした意識で、胸の痛みと外の強い光に頭痛を感じながら、ほんの300メートルしか離れていないマンションに、ヨロつきながら走る辰彦は、焦るような遠さを感じていた。



辰彦はマンションのドアを開け、倒れこむように中に入り、気絶しそうになりながら這って浴室に向かった。



「店長おぉ!!なんで風呂の中にぃ!!」



「ふっあう!んぶぶぶぶ ひぐうううう!あうへ!ぐぶぶぶぶぶ」



辰彦は水も止めず栓も抜かず、まっさきに瑤子の呼吸を確保しようと、フラフラする自分の身体を、膝を曲げ、浴槽の底と瑤子の間にすべり込ませた。

瑤子は辰彦の身幅の分だけ体が上がり、頭が水面から完全に出た



「ぶぶぶぶ ひぐうう ひっ ひっ ひっ ひーふー ひーふー ひーふー」



辰彦は手を伸ばして栓を抜こうとしたが、ふと、自分の股間のイチモツが、瑤子の陰部に当たっているのに気づいた。自分の体の上に逆海老反ったショーツさえ穿いていない素っ裸の女が乗っているのだ。

意識が朦朧とした辰彦は、栓に伸ばした震える手を引っ込めると、その手でゆっくり自分のトランクスを下にずらし、にわかに勃起してきたイチモツを瑤子の陰部に突き刺した。そして両腕で瑤子の肩をしっかり抱きしめた。



「あふひおお! やへほお! あはあおお!」



すんでのところで命拾いをした瑤子は、しかし己を犯そうとする辰彦にギャグの下から「馬鹿野郎」と罵声をあびせたのだ。



だが、辰彦の意識は次第に遠のき罵声も届かず、瑤子の肩を抱きしめたまま気を失い、ジワジワと浴槽に沈み込む。辰彦の腕に引きずり込まれるように、瑤子の頭も再び水中に次第に引きずり込まれていくのだ。

まるでシンクロナイズドスイミングの選手を逆海老反り縛りにし、斜め逆立ちにさせたように、辰彦の脚によって支えられて脚や尻は水面から出て、逆立ちに近い形になってしまい、激しく反った美脚をひきつらせてうごめかさせている。



「いわあああ !あふひお! あふひお! あふひぶぶぶ  んぶ!んぶ!」



瑤子は死に物狂いで、首と背筋を震わせるように力を入れる。辰彦の両腕を振りほどき、完全に水中に没した頭を水から出そうと、水を飲みながら必死にもがく。



「んぶっ ぶっぶぶっ ぶぶぶ・・・・・んぐ んぐ んぐ」



拘束し反った美脚をシンクロナイズスイミングのように筋肉を浮き立たせて前後左右に振り回す。死に物狂いの動きが、水に濡れて艶やかに光る美脚の曲線美をさらに強調させて、辰彦の身体のうえでイチモツを下半身にくわえたままもがき狂う。



・・・死にたくない!・・・



「ぶふううっ・・・んぐ んぐ んぐ んぐ」



息を全て吐き出しまい、こんどはひたすら水を飲みこみながら、美体をひきつらせいぇもがき、死に物狂いで頭を水面に出そうとするのだ。



・・・辰彦おおおお!・・・誰かああああああ!・・・



んぐ んぐ んぐ んぐ んぐ んぐ んぐ んぐ んぐ





                終わり













 

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