セイウチン考

セイウチンについて、思いついたままにつらつらと。

名前について

セイウチの超人だから、セイウチン。セイウチは、貝などの軟体動物を主食とします。
セイウチンがお魚好きなのは、きっと個人的好みです。

容姿について

ファッションは、猟師と漁師が基本です。
猟師のような毛皮の服に、魚河岸にいる漁師の長靴みたいなブーツです。

タッグ編の現在は、猫っぽいです。魚を食べる肉食獣には違いないですが、セイウチっぽくはありません。

セイウチンの物語

二期生編では、母親に誤解されるが、観客席にいる人物の証言で、母親に良い子と認められます。これは、師匠を誤解するが、肉屋のおばさんの証言で、誤解が解けるジェイドの逆パターンです。というか、ジェイドがこれの逆パターンですね。

MAXマン、クリオネマンと、二回ほど万太郎に仇を討たれています。オリンピック編のだるま落としも、「万太郎がクリアする試練で、失敗する役割」には違いありません。
主人公の引き立て役です。
Vジャンプ版では、万太郎の助言が逆転勝利のきっかけとなります。

セイウチンは、典型的な「母の息子」です。父親がおらず、母親とのつながりの強い彼は「母なる海」に誘惑され、とりこまれるという話を、対クリオネ戦でもバス・ザ・シャワー戦でも演じていました。その後彼は海を支配する神、ネプチューン(ギリシャ神話ではポセイドン)の名を持つ男に出会って、男らしさに目覚めるのですね。

セイウチンは、母親との心のつながりが強いので、自分を母親の延長のように思っています。それがセイウチンの家庭的な優しさを、形作っています。

貧しい暮らしに不満はあるけれど、それは自分が努力するしかない、そう思って真面目に生きてきたのです。

セイウチンには、真面目にやっていれば、少しづつ周囲に認められていくというような、期待があったのでしょう。実際セイウチンは学生時代、優等生でした。
しかし、超人格闘家としては、それでは足りない部分があったのです。

それは他人を傷つける覚悟のようなものです。格闘家として強くなるために必要なのは冷酷さだというような話は、時々聞きます。他人と名誉や賞金を奪い合うのが、格闘家の世界です。

しかし、セイウチンは、攻撃的になることを、恐れています。
母親を気遣って生きてきたので、他人を傷つけることはしたがらないのです。
例えば、「どうして、オラの家はボロ屋なんだ」みたいな不満を、母親に対して口にしたところで、仕方がないと言うことを幼いうちに悟ったのでしょう。
ボロ屋に耐えているのは、母も妹も同じです。
むしろ母親や妹は、自分が苦労してまでセイウチンを支えてきたのです。
自分が攻撃的になったら、母親や妹が悲しむ、自分がお腹いっぱい食べたら、妹や母親の分がなくなる、貧しい家族三人の生活の中で、セイウチンはそう思って生きてきたのでしょう。

そんなセイウチンの心の中には、頼もしい父親がいたころは母親も妹も自分も、もう少し幸せだった、みたいな気持ちがありました。
そういう「頼もしい父親」を求める気持ちが、万太郎をアニキと慕うような言動につながっていったのでしょう。それは「自分が負けても、万太郎アニキが、きっとなんとかしてくれる」という、甘えとも自己犠牲ともとれるような態度とも関係しています。
チェックは「父親とは支配者だと思っていて、それに依存する」のですが、セイウチンは「父親とは保護者だと思っていて、それに依存する」のでしょう。

そういう「良き保護者」という期待をしていた万太郎に、「何かを奪い合う相手」として敵視されたことと、この「苦労する母親」を助けたい、その期待に応えたいという気持ちがセイウチンが、ネプチューンマンに従った背景にはあると思います。

セイウチンがネズミを殺すのを見て、「他の超人がネズミ並に見えれば、セイウチンは勝てる」とネプチューンマンは思って、セイウチンに自分達以外の超人は、みんな下等な奴等だと吹き込んだのでしょう。

セイウチンにとって、ネプチューンマンと組むと言うことは、新たな父親代理を求める行為でしょう。

ナチグロンとの類似性について

『キン肉マン』で、お人好しで弱くて田舎者で、主人公を慕っているキャラと言えば、ナチグロンでしょう。

二十数年前に描かれた『キン肉マン』では、おちこぼれの下町っ子ヒーローだったキン肉マンが、いじめられているおちこぼれ怪獣のナチグロンをかばって、こういいます。

「おちこぼれのどこが悪い 世の中 
ウルトラマンやゴジラばっかりじゃないわい」
キン肉マン (1)』文庫版

まさに社会の底辺に生きる者の、庶民的な思いやりですね。

このナチグロン、この次の回ではいきなりキン肉ハウスに押し掛けて、エプロンをつけて朝食の支度をしていました。元から裸の怪獣なので、裸エプロンです。そしてマリさんかと勘違いした、キン肉マンに抱きつかれてキスされて、照れていました。間違ったキン肉マンの方はおえーとなっていましたが。

「ぼく スグルさんが ダメ超人といわれながらも 
必死になって 戦ってる姿に ムネをうたれたんだ
ぼく もう ヤクザな怪獣稼業から 足をあらって スグルさんみたいに
世のため 人のためにつくして 星のおかあさんに
喜んでもらいたいんです…」

こう言ったナチグロンに、ミートはお肉を買ってくるという試練を与えます。甘い父と試練を与えるその妻のパターンは、ここにもあります。
ナチグロンはまちの人たちに弱虫怪獣としていじめられます。さらに、かつての怪獣仲間に足抜けを責められて殴られ、蹴られます。
それでも彼はキン肉マンに助けを求めず、ひとりでそれに耐え、そんな彼をミートとキン肉マンは自立した男として認めるのです。
これは「自分に優しくしてくれた憧れの人の面影を心の支えにしながら、日々の辛さに耐え、内なる母に従い他者に尽くす」という物語でしょう。原作ではナチグロンは初期のみの登場キャラで、いつのまにか旅立ってしまいます。

強い男に憧れる内気な少年の物語は、ナチグロンとセイウチンに共通するポイントです。しかし、セイウチンが万太郎が必死になって戦う姿に、いまさらムネをうたれるとも思えません。万太郎がセイウチンにその「強さと優しさ」をどう示すか、気になるところではあります。ナチグロンはキン肉マンに負けていますが、セイウチンはまだ負けていませんよね。ナチグロンと同じパターンなら、万太郎が勝って止めを刺さない、なのでしょうが、類似キャラだということは原作者も意識してしているでしょう。


初出2007.4.20 改訂 2007.4.20

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