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  『暴虐都市』 (2)                                    久遠 真人作         

【2】忍び寄る魔の手

「作業、終了しました。また、何かお声をかけてください」
「はーい、ご苦労様でした」

若い作業員が追加の鍵を取り付けた事を報告すると、摩耶はやっとホッと肩の力を抜く事ができた。大家さんに相談し、鍵の交換だけでなくピッキング対策に最新式の電子暗証キーを取り付けてもらったのであった。ICカードと暗証ナンバーの入力をしないと開錠されないタイプなので、開けられる事はありません・・・・・・と作業員はICカードを摩耶に渡しながら自信をもって言い切っていた。ただ、特殊な鍵という事もあり、取り寄せに時間がかかったのか取り付けてもらったのは予定より4日も経ってからであった。

「ふわぁ・・・・・・今夜は、やっと安心して眠れそうだわ」

そう言うと、摩耶は大きな欠伸をかき目じりに涙を浮かべた。ここのところホテルの慣れないベットであったのと、寝込みを襲われた事件の後という事もあり、ろくに眠れてなかった。だからだろう、その夜は久々に感じる自宅のベットの感触を感じながら、すぐに深い眠りについた・・・・・・。



・・・・・・だから・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガチャっ



・・・・・・その小さな物音にすぐに気が付く事ができなかった。





「グハッ・・・・・・・・・・・・むぐっ?!!」

不意に腹部に重いものが乗かった為、思わず息を吐き出した口元にスポンジのようなモノが強引に押し込まれた。だが、深い眠りから覚醒しきらない摩耶は、とっさに事態を把握する事が出来なかった。その混乱に乗じて、スポンジの塊を口いっぱいに押し込まれた口もに、すぐさま粘着テープが貼られ吐き出せなくなってしまった。
その頃になって、何者かが腹部に跨るように座られているのだと把握した。腕で振り払おうとしたが、両手も足で押さえ込まれており、肩を揺するぐらいしか出来なかった。

「うひひひっ、暴れても無駄だぁ無駄だぁ」
「チッ・・・・・・無駄口を叩いてねぇでぇ、さっさとしろや!!」

腹部に乗った男の下卑た声をあげると、枕元で別の男の苛立った声が聴こえてきた。その時になって摩耶は来襲者が一人でない事に気が付いた。視線を横に向けると薄暗い寝室に更に3人の男たちがいた。どの男も摩耶には見覚えはなかったが、全員が厳つい体格をしており、暴力の世界に身を置く者特有の凄みを放っていた。

「ウグッ・・・・・・ッツ」

暴れる摩耶の腕をそれぞれの男が持つと、腹部に乗った男が退いた途端、簡単に背後に捻じり上げられ動きを封じられてしまった。そのまま、ベットから下ろされると、もう一人の男が足元の大きな鞄から幅広のベルトのようなモノを取り出した。
男たちは相手を制する術に長けているのだろう。2人の男によって身体はガッチリ固定され、抗おうと身体を揺するもピクリともしなかった。4人目の男によって、背後に回され交互に組まされた両手、その手首から肘の間にに幅広のベルトが巻きつけられていく。ギュッと締め付けられギチギチと両腕を締め付けてくる。
だが、その瞬間、摩耶を押さえつけていた男たちの力が僅かに抜けるのを見逃さなかった。

「・・・・・・ふっ!!」
「・・・ウッ・・・・・・グゥゥ・・・・・・」

左右の男たちの手を振りほどくと、懇親の力を振り絞って寝室の出口の前に男の股間を蹴り上げた。両手で股間を押さえながら前のめりに倒れる男の脇をすり抜けリビングへと抜け出した。

「あっ、この阿女ぁ!!」

背後から男たちの怒声が聞こえてくる。だが、既に玄関は目の前だった。
背中から玄関の扉にぶつかるように到達すると、不自由な後ろ手でドアノブを掴んだ。


・・・・・・ガチャガチガチッ

だが、ドアノブを回してもガチャガチャいうだけで扉は開かなかった。

(「なんで?!」)

慌てて震える指で必死で鍵を操作する。

「んっ! んんんっ!!」
(早く!早く開いて!!)

だが、いくら操作してもドアノブがガチャガチャと空しい音を立てるだけだった。

「電子暗証キーに手を入れさせてもらったからよぉ、いくらやっても開かねぇぜ」

突然、背後からかけられた声にビクリと肩を震わせる。
男たちは慌てる風もなくニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらゆっくりと歩いていた。

「ジャジャ馬とは聞いてたが、予想以上だなぁ・・・・・・しばらく眠っててもらうぜ!」

そう言って目の前に立った男の手にはバチバチと音を立てるスタンガンが握られていた・・・・・・



・・・・・・そして摩耶の記憶はそこで途切れた・・・・・・

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