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 崩れ堕ちる高級妻    第1話

崩れ堕ちる高級妻(1)

 高級住宅が立ち並ぶ街並み、その中でも一際豪勢な邸宅が沈みゆく夕焼けを受け輝いている。

 その豪邸のリビングに家の主らしき夫婦が並んでソファーに腰を下ろしている。男の方は30代後半から40前後と言ったところだろうか…端整な顔立ちに整った髪形、高級そうなスーツをきっちりと着込み、さも上流階級ですと言った雰囲気を醸し出している。

 隣に座る女も言うに及ばず、まるで女優かとも思えるほどの美貌と、モデルにしてもおかしくないほどの抜群のスタイル、それを上品な薄桃色のニットで包み、すらりと伸びる下半身は乳白色のロングフレアーで覆っている。

 見るからに裕福で何もかもを手に入れたような二人であるがその表情は暗く、交わす言葉も無く終始俯いたままなのだ。

 その原因とも言える男が2人、テーブルを挟んだソファーにどっかりと腰を沈めている。一人は、これも高級そうなスーツに身を包んでいるものの、目の前の夫婦のものとは明らかに違い、ギラギラと飾り立てた様は見るからに一般人とは違う事を物語っていた。

 もう一人は他の三人とは打って変わり、ジーンズにT−シャツという出で立ちで、真っ黒に日焼けした肌とT−シャツをパンパンに押し上げる筋肉は、アメリカのフットボール選手を連想させた。

 一時の間、リビングは水を打ったように静まり返り、時計の針の音だけが、時の流れを継げていた。その静寂を破ったのはT−シャツの大男である。

「オラッ!黙ってても解かんねえだろうが?!あ?」

 言いながら目の前のテーブルをバンッ!と叩き。

「…川島さんよぉ?…あんた、五千万もの借金をどうやって返すつもりだ?…土地も家屋も押さえられちまって…もう無理なんだろ?」

 目の前の優男を鋭い目付きで睨み付け、グイッと大きな身体を迫り出す。そして男の表情を下から睨み上げるように…

「こらッ…黙ってても解からねえだろうが?…あ?どうなんだよッ!…今日中に5千万用意できんのか?!」

 ビクリと身体を震わせ、おずおずと顔を上げる優男――大男の顔をチラリと見た後で、恐る恐る隣の男へと視線を移す。

「…で、ですから…お、お金のほうは…必ずどうにか致しますので…も、もう少し……」

 優男の言葉の途中で大男がもう一度テーブルを叩く。

「アアッ?!…ふざけんじゃねえぞ、コラッ!!…もうどれだけ待ったと思ってんだ?あ?!…こちとらガキの使いじゃねえんだ…今日こそは耳を揃えて返してもらうからなッ!…あ?解かってんのか?!」

 ドスの効いた言葉に震え上がる男と女、不意に優男はテーブルに両手を付き…

「お、お願いしますッ!…か、必ずお金は用意しますので…あ、あと一ヶ月…い、いえ…一週間…一週間だけでも時間を下さいッ!…必ず、必ず何とか致しますのでッ!」

 優男の言葉にガツンッ!とテーブルを蹴り上げる大男。

「おらぁッ!!…ふざけんじゃねえぞッ!!…そうやってもうどれだけ延ばしてやったと思ってんだッ!!」

 ああっ?!と大声で怒鳴りながら優男の胸座を掴み上げ、凄みを利かせた顔で睨み付ける。

「…今日返せねえって言うんだったらな…てめえら二人、肝臓でも腎臓でも売ってもらうからなッ!…肺でも眼ん玉でも、売りゃぁそれなりの金になるんだぞッ!!…あッ?!…どうなんだよっ?!」

 怒鳴り散らすように言うと更に優男の胸座を絞り上げて睨みつけ、次いで女へも鋭い眼光を投げつける。
 
 ガクガクと震え上がる優男が、同じように震える妻へと視線を移し…

「そッ…それだけは…勘弁してください…お、お願いします…お、お金は…お金は必ず何とかしますから…」

 弱々しい口調で哀願する優男に、それでも大男は掴み上げた胸座で男の喉を締め上げ…

「金がなんとか出来ねえから、こんな事になってんだろうがッ!!…もうお終めえなんだよッ!!…あんたら二人はなッ!!…夫婦仲良く植物人間になるしかねえんだよッ!!」

 すると、今まで沈黙を守っていた兄貴格の男が、組んでいた両腕をおもむろに解き大男を制止する。

「おら、恭二…そんなに怒鳴りまくってちゃ、此方さんも何も言えねえだろ…」

 チラリと優男を見遣り、次いでソファーの隅で蹲るように震える女へと視線をうつしニヤリと笑みを浮かべる。

 兄貴格の男に促され大男が優男から手を離す。優男はストンとソファーへと崩れ落ち、震えながら縮こまる。

「三島さん…五千万の借金、どう足掻いたって返せねえことはあんたら本人が一番解かってるはずだ……で…まあ、その話は置いといてだな……こないだの話…考えておいてくれたかい?」

 兄貴格の言葉にビクンと反応を示す男と女、オズオズと顔を見合わせ…

「…こ、このあいだの話といいますと?…あ、あの…ま、まさか…あのお話のこと、ですか?…」

 優男が恐る恐る男に尋ねる。兄貴格はニヤリと頬を緩め女へと視線を移し、全身を舐めるように見つめまわす。

「クククッ…そうだ…あんたの奥さん…麻美さんの身体を、一日だけ自由にさせて貰えれば…借金のことは考えてやってもいいんだがな…」

 可憐な花のように目の前のソファーで震える人妻を、まるで値踏みでもするような卑猥な目付きで舐めまわし…

「…三島麻美さんか…俺に取っちゃあんたはまだまだ、新庄麻美なんだけどな…」

 ククッと表情を綻ばせ更に続ける。

「結婚するまでは…夜のニュース番組で、メインキャスターやってたよな?…俺あショックだったんだぜ?…あんたが結婚するって聞いてな…俺もあんたのファンの一人だったからな…」

 兄貴格の言うとおり、目の前に座る女「三島麻美」は結婚するまでは「新庄麻美」として某民放の看板キャスターを務めていたのだ。

 その美貌と抜群のスタイルは言うまでも無く、その上知性までもを備え持ち、当時は国民的アイドルとして一世を風靡していた。

 そのうち青年実業家――今、目の前に座る優男であるが――との恋が発覚し世間をアッと言わせたのも束の間、結婚を期にそのまま引退を宣言しブラウン管から潔く姿を消したのだった。

 「ククッ…まさかこんな所であんたに巡り合えるとは思いもよらなかったぜ?…あれから6年か…あの頃と全く変わってねえな?…いや、あの頃の少女臭さも抜けて…更に魅力的になったじゃねえか…」

 23歳で結婚・引退をし六年、29歳になる麻美は更に女らしさに磨きを掛け、キャスター当時とは比べ物にならないほど大人の女としての色気を身にまとっているのだ。

 女が兄貴格の卑猥な視線を感じイヤッ…と身体をよじる。隣で身を縮込める優男がそれを見て

「そ、それだけは許してくれッ!…お、お願いしますッ…ほ、他の事なら…な、何でもしますッ…だ、だから…それだけはッ!…」

 テーブルに額を擦りつけ頼み込む優男。しかしその後ろ頭を大男が掴み上げる。

「…馬鹿かてめえッ!…他に方法がねえから、こうやって兄貴が言ってやってるんじゃねえかッ!!…それが嫌だってんならなッ!…二人で仲良く植物人間になるしかねえんだよッ!!」

 そう言うと掴み上げた優男の頭をテーブルにガツンッ!と叩きつける。

「恭二ッ…そんなに脅かすんじゃねえよ…ちったあ考える時間をやんなきゃよッ…いい答えも出ねえってもんだぜ…なあご主人さん…それに、奥さんもよぉ」

 ニヤリと頬を吊り上げ、優男には目もくれず女へと視線を這わせたまま…

「なあ奥さん…あんたはどうなんだい?…二人仲良く植物同然に生きるか…それとも一日だけ俺達の自由にされて…また二人でちゃんとした生活にもどるか…頭のいいあんたのことだ…どっちが得かってこたぁ、考えなくてもわかるよなぁ?」

 兄貴格の男の言葉に、麻美は気丈にもキッと睨み返し…

「…ほ、本当に…一日だけ私を自由にさせれば…しゃ、借金のことは考えてくれるんでしょうねッ?」

 「ああ、嘘はつかねえよ…あんたらの借金は俺がどうにかしてやる…なっ?…だからもう腹を決める事だ…どっちみちあんたらには他に方法はねえ筈だぜ?」

 妻と男の遣り取りを聞いていた優男が、蒼ざめた顔を妻へと向け…

「まっ、待てッ…そ、そんな事…そんな事考えるんじゃないッ!…ほ、他に…まだ他に方法があるはずだッ…」

 慌てふためいたように言い、膝の上に揃えられた妻の手へと腕を伸ばしギュッと握り締める。

 しかしその腕をグイッと掴み上げ捻り上げる大男。

「オラッ!…てめえに聞いてんじゃねえんだよッ!…ちったあ大人しくしてろッ!!」

 骨も砕けんばかりに捻り上げられた腕に、優男がグアーッ!!と悲痛な叫びを上げる。

「アアッ!あなたッ!…やめてッ!…やめて下さいッ!…お願いですから主人から手を離してッ!」

 女が悲痛な表情で訴えるが、大男は無言のまま更に力を加え…優男の絶叫がリビングに木霊する。

「どうだい奥さん?…俺の提案を受け入れる気になったかい?」

 大男の代わりに兄貴格が口を開き。

「…わ、解かりましたッ…あなた達の言うようにしますッ…言うようにしますからッ!…お願いッ、主人の腕を離してあげてッ!」

 女の言葉に兄貴格が大男に目配せをする。腕を離された優男は、それでも苦悶の表情を浮かべたままソファーへと崩れ落ち、肩を押さえてグウウウウッ…とうめき声を上げる。

「ククッ、契約成立って訳だ?…な、奥さんよぉ……それじゃあ、早速始めるとするか…」

 兄貴格は言いながら大男の肩口をポンと叩く。大男はスッと立ち上がり、女へと歩を進め…

「クククッ…こんな綺麗な奥さんを…今日一日、自由に出来るってわけだ…」

 迫りくる大男に脅えた表情を向け…

「アアアッ…ま、待ってッ…い、今すぐなんてッ……お、お願いですッ…少し、少しだけ時間を下さいッ…しゅ、主人とも…話をさせて下さいッ…お、お願いしますッ!…」

 女の悲痛な叫びに兄貴格の男が「いいだろう」と声を上げ、大男を制止する。

「…それじゃあ今から一時間…一時間だけくれてやらあ…」

 言いながら腕にはめた金ピカの時計へと視線を移し…

「…今から一時間後…8時から24時間…あんたの身体を自由にさせてもらうぜ…それまで、最後の晩餐ってわけじゃねえが…ゆっくり今後のことについてでも話し合いなッ…」

 そう言うとソファーからスッと腰を上げる。

「二人っきりにしてやりてえとこだが…あんたらに自殺でもされたら元も子もねえからな…まっ俺達ゃあっちのキッチンにでも行っとくぜ…」

 兄貴格の男は大男を顎で促し、キッチンへと歩き出す。

「おい恭二…あの二人にコーヒーでも煎れてやんな…ちったあ落ち着いてもらわねえとな…」

 ソファーの二人にも聞こえるように言うと、大男はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべ…

「ヘヘヘッ…解かりましたぜ兄貴…とびきり美味いコーヒーを煎れてやりましょう…」

 大男は兄貴格より先にキッチンへ入ると、戸棚を弄りカチャカチャとコーヒーカップを用意する。

 四つ並べられたコーヒーカップ、中にはなみなみとコーヒーが注がれ、その内の一つに何やら怪しげな液体を流し込む。

 キッチンで目配せしあう男達、クククッと卑猥な笑みを浮かべる。

 その液体は、遅効性ではあるが極めて強力な催淫剤であった。遅効性ゆえ、相手に気付かれることなく肉体を発情させる事が出来ると言う代物だ。

 以前これを飲まされたアイドルタレントは、処女だと言うのに快楽の虜となり、自ら進んで浮浪者に女を捧げてしまったのだ。そして初めての性交にも関わらず汐を吹きまくり、小便までもを垂れ流しながら、何度も何度も強烈な絶頂に上り詰めたのである。

「クククッ…あの奥さん…「新庄麻美」がどんな風になるか…今から楽しみだぜ…クククククッ…」

 兄貴格が下品な笑い声を上げると、大男もニンマリとほくそ笑み、液体を混入されたカップともう一つを持ち、リビングへと向かう。

「おら、心優しい兄貴からの差し入れだ…これでも飲んで、落ち着いて話し合いなッ」

 男と女の前のテーブルへとカップを置き、女の前に催淫剤の混入されたカップを差し出す。

「…変な事考えるんじゃねえぞ…ちゃ〜んとあっちのキッチンから見てるからな…少しでも妙な事してみやがれ…どうなるか解かってんだろうなッ?」

 凄みを利かせた表情で二人を睨み付けると、ニヤリと笑いながらキッチンへと踵を返す。

 大男がキッチンに戻り数十分――二人向かい合う恰好でテーブルに腰掛け、ボソボソと何やら言葉を交わす。二人とも表情は卑猥にほころび、チラチラとリビングの夫婦を覗う。

 その夫婦はと言えば、神妙に表情を曇らせたまま小声で会話を交わしている。会話の内容は判らないにしても、「しかたがない…」だの「二人のためにも…」だの「すまない…」だの、お互いを慰めあいかばい合うようなたぐいの言葉が、僅かに聞き取れた。

 しかしキッチンから見つめる男達には話の内容などはどうでもいい事だった。気になることと言えば、先程のコーヒーを女が飲んでいるかと言うことだけで。

 女がコーヒーを口に含む度、男達は顔を見合わせて笑みを浮かべる。

「クククッ…知らぬが仏ってぇのはこう言うことだ…あと数時間後にはよぉ…あの知的で清楚な美人妻が…あられもない痴態を晒す事になるんだぜ…」

「そうっすね兄貴…あれほどのいい女が乱れる姿なんて想像も出来ませんが…それだけ期待も高まるってもんです…ククッ、どれだけ卑猥に発情しちまうことやら…」

 リビングの二人を覗いながらほくそ笑む二人のヤクザ男、これから行われるであろう淫靡な宴に卑猥な妄想は膨れ上がるばかりだった…


(つづく)

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