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 第一部(1)囚らわれて

女スパイ麗佳はドジを踏んだ。
敵はどうやら民間の建物を連絡基地にしているらしいという情報を元に、苦労して潜入した敵アジトだった。
機密文書をあさっているうちに、男達が予期せぬ時刻に戻ってきてしまったのだ。
170cmを超す大柄であり格闘技も得意な麗佳だったが、相手が複数の男達では勝ち目はなかった。押え込まれ後ろ手に縛られ、別室に連行されてしまった。

一通りの調べが終わると、好色そうな男達が6、7人も入ってきて、やおら平台の上に仰向けに乗せられると両手足を拘束されてしまった。
手首、足首をロープでがっちりと縛り付けられてしまったおのれの不覚に歯ぎしりして悔しがるがもう遅い。
キッと唇を噛み締め、見まわすと、男達は舌なめずりをしつつ、いやらしい目でこちらを見ている。
麗佳は濃緑色の戦闘服姿だった。
見るからに貧相な男が近寄ると、いきなりコンバットブーツの靴紐を解いて脱がせようとする。

「さわるなよっ!この野郎!」
と叫んだ。
すると男達はいっせいに「へへへっ」といやらしく笑った。
身体をばたつかせて抵抗はしたが、両手足とも縛り付けられているので簡単に戦闘ブーツは脱がされ、さらにははいていたソックスもするすると剥ぎ取られた。
無性に腹が立ち、怒鳴りたかったが、冷静に状況を把握しようという気もあった。
麗佳は筋金入りの女闘士であり、常に状況を判断し、必要な行動を取れるよう訓練されていたのだ。
もっとも、両手足をがっちりと拘束された今の状況では、男達の人数を数えるくらいしかできなかったが。
その男は続いて、おずおずと戦闘服のベルトのバックルに手を伸ばした。

「やめろよ! クソ野郎! さわるんじゃねえよ!」
数々の訓練で鍛えた形相もすさまじく、麗佳は男どもを睨み付けた。
とても女の声とは思えぬほどの図太い声に、男は一瞬手を止めたが気を取り直し、カチャカチャとバックルを外すと、すーっとベルトを抜き取ったのだ。
ベルトは意外にあっけなく腰の周囲から抜き取られた。

「てめえっ!」
と鋭く叫ぶと、その貧相な男を強く睨んだ。
しかし男は
「ほー、恐いねえ」
と軽く受け流し、今度は戦闘ズボンのジッパーをジーッと音を立てて下げると、続いて最上段のボタンをスパッとはずした。麗佳ははっとしてその方を見た。

はじめは怒りにあふれていたので気付かなかったが、段々と自分のおかれた状況が絶望的であることに気付きはじめてきた。
焦りの気持ちが湧いてきた。それを自分で覆い隠す様に、
「さわるなって言ってんだろ!」
と激しく身をよじりながら怒鳴った。相当な迫力だ。
男はその迫力に押されるように二三歩退いた。
しかし男達の目は麗佳の腰部に集中していた。
戦闘ズボンの前あわせが、少し左右に開きぎみになり、薄いブルーのショーツがちらちらと見えてしまっていた。
その薄いパステル色は、戦闘服姿のごつい男達がギラギラする灰色のコンクリート部屋の中では、ひどく場違いな、いかにもかわいらしいものに見えた。
麗佳はしまった、と思った。こんなかわいい色のなんて穿くんじゃなかった、もっと無骨なやつにしておけばよかった、あるいは黒いやつにしておけばよかった、と思った。
男はおずおずと手を伸ばすと、ジッパーを完全に下ろし、前あわせをさらに大きく開いた。

「この野郎!やめろって言ってんだろう!」
麗佳はさらに怒鳴った。焦りがどんどん増してくるのがわかった。
男はかまわず、ズボンの布地に手をかけると下に下げようとした。
麗佳は必死にお尻を台に押し付けて、そうさせまいと抵抗した。
すると、さっと別な男が近寄り、無理矢理、麗佳の腰部を持ち上げたのだ。
ずるっという感じで戦闘ズボンは膝のあたりまで降ろされてしまった。

「ガアッ!」
恥ずかしさのあまり声にならない叫びをあげる麗佳。
いっせいに男達の視線が集中した。
その視線を痛いほどに感じて両ももをきつく閉じたがむき出しになったショーツは隠しようもなかった。
男達はさっと周りに集まると、そのパステル色をまじまじと見つめた。
よく発達した腰骨からお尻の筋肉にかけて、ずっしりとした重みがあった。
それをぴっちりと包んだブルーのショーツはなんともなまめかしかった。
恥丘がはっきりと盛り上がり魅惑的な主張をしていた。
男達は手を出さずに、ニヤニヤしながら舐めるように見ているだけだった。
麗佳はかえってその観察に耐え難さを感じた。
よりによって、足ぐりのところには小さな白いフリルがついていた。

「ああ、しまった...」
とひたすら後悔した。
よりによってこんなかわいいやつを選んだ自分の心のスキを見られてしまった、という気持ちでひたすら悔しくて恥ずかしかった。
もっとダサい無骨な下着にしておけばよかった、と思った。

「なに見てんだよ、この野郎!」
と思わず叫んでしまったが、その自分の言葉でかえって見られている自分を意識してしまった。
「このあたしが、今、下着を見られている...」
そう考えるだけで全身が恥ずかしさで燃えるようだ。
おまけに男の一人が手をのばすと、臍の下あたりの小さなリボンをつまみはじめた。
カッと全身が熱くなった。パステルブルーだけでも十分なのに加え、小さなリボンまでついていたとは...。

麗佳は身長170cm、62kg、筋肉質でがっしり型だ。日ごろの厳しい訓練でよく鍛えあげられているので、まるで女子レスラーみたいな身体をしている。肩や腕の筋肉はよく鍛えられ丸太のようにがっしりとしている。足腰はハガネのように強靭で近接戦闘に威力を発揮しそうだ。
胸やヒップは豊かに発達しているが、それ以上に首、肩、腕、足腰などが発達しているので少しも女らしい体型には見えない。麗佳はまったくの戦士なのだ。容貌はこれまたアゴのがっしりしたまるで男のような顔で、髪は短く刈っている。鼻はどっしりとして意志が強そうだし、目線も強い。唇も厚く、まったくお世辞にもかわいいとは言えない。いかにも激しい訓練を経てきた、筋金入りの女スパイの容貌をしている。

男まさりで、美人でもないので、もてるタイプではない。だから男経験は無いわけではなかったが、数えるほどでしかなかった。要するに男好きのする女ではなかったし、麗佳自身、別に男にあこがれるような女でもなかった。勝ち気で根性がすわっており、自分に自信を持っていた。

麗佳は今までの軍事教練で常にトップだった。特に格闘術や戦闘訓練、体力訓練には誰にも負けなかった。並みの男性隊員では相手にならないほどで、麗佳は弱々しい男を軽蔑していた。また戦術教練においても破壊活動知識においても、常に成績優秀であった。

麗佳にはそれだけの自信と誇りとがあったのだ。大抵の男など相手になどならないと思っていたし、男も女も関係なく自分はエリートだとの自認があったのだ。
それが今やこんな貧相な、いまいましい敵どもの前で、こうして下着姿をさらし、かわいらしい下着のリボンを指でもてあそばれている自分を思うと、まったく気も狂いそうに怒りと恥ずかしさが湧いてくるのだった。

「このーッ! さわるんじゃねーッつの!」
怒りと恥ずかしさとを振り払うかのように大声で怒鳴る麗佳であった。


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