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   第1章

「はっ!」「やっ!」「とう!」若い女性の気合の入ったかけ声が道場に響く。紺のジャージの上下を着た長身の女がばっと脚を踏み込みつつ、正拳で突くところを、組み手をしている少女が腕で受け、逆に足払いをかける。長身の女拳士は舞うような動作で足をすっと上げて避け、少女の肘のあたりをぐいっと掴んで引くと同時に腰に向けて拳を放った。

「うっ!」拳は少女の腰の上でぴたっと停止している。
「ふう、参りました。」少女がにっこりと笑顔を向けた。
「ふふっ、でもなかなかいい感じになってきたわよ。」女拳士も優しくほほえんだ。ジャージの胸が形よく盛り上がり、くびれた腰と張った尻が成熟した女の肢体を強調している。脚も長いのだが、体全体のバランスが良いため、あまりのっぽには見えない。顔はやや大人しげな和服の似合いそうな美人だが、瞳は大きく、そしてきらきらと輝いている。

「美雪、きょうはここまで。」白鳥美樹は初めての弟子に満足そうに微笑んだ。
「はい!先生。」島津美雪がスポーツタオルを差し出した。
あの淫獄楼の死闘から半年が過ぎた。警察に救出された二人は事情聴取を受けたが、元教頭の権田や加藤のことなどの細かい話は避け、町のチンピラに拉致された女生徒を助けに行って闘いになったと説明した。裸同然の二人の姿を見れば、何があったかは一目瞭然だったが、二人は頑なに被害届けは提出しなかった。

美樹は、もうあんな連中と関わるのはまっぴらだった。美雪のためにも噂になるのは嫌だったし、とにかくもとの平和な教師生活に戻りたかった。
焼け落ちた淫獄楼からは不思議なことに誰の遺体も発見されず、所有者のいない古い建物からの不審火として、警察も大騒ぎにせずに事件は立ち消えになった。

美雪が美樹に中国拳法の弟子入りを願い出たのは、事件からひと月ほどたったある日のことだった。体をぼろぼろにされながらも、悪に立ち向かう美樹の姿をみて志をたてたのだという。美樹は最初、闘いの世界に美雪を巻き込むような気がして迷ったが、武道は心を鍛えるものであることを十分に念を押したうえで、美雪に中国拳法を教えることにした。しかし、始業前に、毎朝人気のない体育館で美雪に拳法の手ほどきをする日課は、美樹にとっても楽しいひとときとなった。そして、美雪との女同士の愛も深まるばかりだった。

「さぁ、シャワーでも浴びてさっぱりしましょ。」美樹と美雪は、まだ気温が上がる前の早朝の体育館の中を、シャワールームに向かって歩いていく。あと数日で夏休みだ。美樹は美雪と旅行にいく計画をたてていた。

「あらっ?」体育用具倉庫の前を通りかかった美樹たちが足を止めた。倉庫の中からくぐもった女性の悲鳴が聞こえる。
「美雪!」美樹が美雪を鋭く振返った。
「はい!」美雪が顔を緊張させてうなづいた。
美樹がさっと倉庫のドアをあけて、美雪とともに飛び込んだ。

雑然と体育用具が置かれた倉庫の床にマットが置かれ、半裸の女が数名の少年たちに組み敷かれている。少年たちは全裸で、そのうちひとりは女の口を手でふさぎながら、ずり上げられたブラジャーからのぞいた乳房にしゃぶりついている。女は必死に逃げようとしているが、体の大きい少年が大きく脚を割り、片脚を高く抱え上げるようにして犯していた。女の片脚に丸まったパンティが絡み付いている。さらに別な少年が女の腕をマットに押さえつけて、イチモツを硬くしながら、夢を見るような不気味な表情で犯される女を見ていた。

「君たち!何をしているんですか!放しなさい!」美樹が叫びながら、女に走り寄った。それでも少年たちは耳が聞こえないかのように女を犯し続ける。
「放しなさい!」美樹は機械のように腰を振り続けている少年の肩に手をかけた。

「うおぉっ!」少年は吼えるような叫び声をあげて振り返ると、突然、立ち上がって美樹に掴みかかってきた。股間のモノを突っ立てたまま、美樹の両腕を掴むとそのままものすごい力で押し倒そうとする。
「くっ!」美樹は腕を振りほどこうとするが、少年とは思えないほどの腕力だ。もうひとりの少年も立ち上がって、美樹の下半身にしがみついたので、美樹はたまらず固いコンクリートの床に押し倒されてしまった。
「先生!」美雪が叫びながら助けようとすると、別の少年が背後から美雪に掴みかかった。美雪も羽交い締めのようなかっこうで、後ろから抱きつかれて身動きができない。

「何をするんですか!」美樹は叫びながら、脚にしがみついている少年の肩や胸に蹴りを放ったが、少年は全く衝撃を感じないかのように表情を変えない。それどころか、美樹のジャージのズボンに手をかけると一気に引き下していく。たちまち美樹の白いパンティと太ももが顕わになった。
「いやっ!」恥ずかしさに顔を赤くしながら、美樹は必死に身をよじるが、上半身を押さえこんだ少年は、万力のような力で美樹の両腕を押さえこんでいる。
強引にジャージのズボンを脱がせた少年は、今度は美樹のパンティのふちに手をかけた。
(犯される!)美樹の脳裏に陵辱の恐怖がよみがえり、思わず身がすくんだ。

「はっ!」鋭い気合いとともに、美樹の下着を脱がそうとしていた少年のこめかみに鋭い蹴りが命中した。
「美雪!」羽交い締めにしていた少年を振りきって美雪が助けてくれたのだ。美樹の下半身にとりついていた少年は、頭を押さえてうずくまった。美樹は腕を押さえ込んでいた少年に膝蹴りを放ち、柔道の巴投げの要領で頭の上に投げ飛ばした。ようやく立ち上がった美樹に再び少年たちが襲いかかる。しかし、今度は少年たちの腕をすり抜けながら、的確に美樹の拳が少年たちの鳩尾をとらえ、二人の少年が気絶して床にころがった。
「とぅ!」美雪が気合いとともに、もうひとりの少年の腹に蹴りを放って打ち倒した。

「ありがとう美雪。助かったわ。」
「いいえ。それにしてもこの子たち・・・。高2のF組の生徒だわ。なぜこんなことを・・・。」美樹は、マットに横たわっている女に近寄った。
「あっ!この人は南条先生だわ。」
少年たちにレイプされていた女は、社会科の南条玲子先生だった。めがねはかけているが、上品な顔だちで、すらりとした体つきの若い女教師だ。南条も美人教師として生徒に人気があるが、来月結婚を控えていた。

美樹は駆け寄ってぐったりと横たわっていた南条を抱き起こした。白いブラウスを着ただけの半裸の胸から、意外なほど豊満な乳房がのぞいている。黒々とした陰毛が妙に生々しく美樹は目のやり場に困った。
「南条先生、しっかりして下さい!」
「あ・・・なんて・・・ことに・・・」唇を震わせる南条の目からみるみる涙があふれ、頬を濡らしていく。美雪も成すすべもなく傍らで呆然と立ちすくんでいた。美樹も結婚を控えた南条の気持ちを考えると、胸が痛んで言葉が出なかった。



体育用具室から少し離れた柱の陰に、一人の男が立っていた。美樹たちからは見えない死角から、ぎらぎらとした目が女たちを見つめている。
「くっ、くっ、くっ・・・なるほど、いい脚をしているな。早く我々の罠に飛び込んでこんか。楽しみだ。待ちきれんぞ。くっ、くっ、くっ・・・」低い忍び笑いが響いた。


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