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 おばけ屋敷でGO!!   書いた人:北神的離

第一話 −発端−
「あうう、また……」

 ある夏の暑い日、豪華なベッドに腰掛けながら、これまた豪華な寝巻きを羽織ったまだ幼さを残す金髪の少女は涙混じりのため息をつく。

 ベッドの中央には、彼女自身が作り出した水たまりがほのかな芳香を放っている。

 彼女は言わずと知れたフェリア・D・ラティオ12歳。
 
 その7や12や108くらいではとても足りない悪癖の一つ、『おねしょ』の前に彼女は頭を抱えていた。




 おばけ屋敷でGO!!   第一話 −発端−




「はぁ、どうして治らないのよう……と悩むのはさて置いて、これ、今回はどうやって誤魔化そうかしら?」

 どうやらおねしょをしてしまった事よりも、その隠蔽工作に苦悩している様子だ。

「よし、まだ日も昇っているし、作戦コードD−26よ!!」

 言いながら金魚鉢を窓際に置き、小物入れの中からマッチを取り出す。

「水の入った金魚鉢がレンズの役割をし、太陽の光を凝縮、ベッドを一瞬の内に焼き焦がしてしまった、初歩的なトリックだよ…とか言い切ってしまえば完璧ぃ!って、あたしって我ながらあったま良いわねぇ☆ ……ちょっぴし太陽の方向と窓の位置が合っていないかも知れないっていうか逆向いてやがるけど、そこら辺は気力と気迫とガッツでカバーよ!いざ、作戦開始ぃぃ!!」

「何を開始するんですか?」

 びくぅ

 予想外の後ろからの声にフェリアは飛び上がり、一瞬の内にベッドの中央へ座りこむ。
 いつもながら驚くべき反射神経だ。
 右手に持っていたマッチと、左手に持っていたマッチ箱を握ったままお尻の下に隠すと、声のした方へと視線をやる。

「うげ…」

 思わず声を漏らす。
 そこに居たのは、彼女がこの世で二番目に苦手としている、そしてこの状況下で一番いて欲しく無い人物だった。

「全く、こんな家の中でマッチなど持ち出して、危ないじゃないですか」

 彼女の妹にして次期ラティオ家当主継承者、ファナ・ラティオであった。

 フェリアと同じ金の髪…もっともこちらはショートカットであるが…の少女は呆れながら言う。
 明らかにフェリアより頭一つ分は小さいながらも彼女よりも礼儀正しく、そして身なり、態度、風格……どれをとっても三歳年上の姉よりも遥かにしっかりしている。

 年齢、経験、功績において彼女を上回っている姉を差し置いて、次期当主に選ばれている理由はその為だろうと、周囲の者達は分析していた。

「あああああんた、どどうしてここにいるのよっ!!」

 あからさまにうろたえながら叫ぶフェリア。
 フェリアは第二後継者という事で、また本人の希望もあり、親元を離れ、ラティス城に程近い高台の一角に居を構えていた。

 その為フェリアは広い屋敷内で思うが侭に我が侭に生活してきた訳である。
 昼寝中は来訪者が来ても追い返せと皆に伝えてある、それは親兄弟、妹のファナであろうと同じ事。
 彼女がきた事はフェリアにとって全くの予想外であった。

「申し訳ありません、どうしてもファナ様がお会いになりたいとおっしゃるので」

 ドアを開けて、黒髪、灰瞳の青年が一礼する。
 最近このフェリア邸に転属された執事、ギルバート・トライスだ。
 それ以前もラティス家に仕えていて、外見が人並み以上という事もあり、フェリア、ファナ共に良くこの青年に懐いていた。

「ぎ、ギルバートぉ、あんた、裏切ったわねぇ……」

「いえ、裏切るも何も…」

 心底恨めしそうに睨むフェリアに怯むギルバート。
 すかさずファナが助け舟を出す。

「何言ってるんですか姉様、私達はやな事に姉妹なんですから、入るのに断りなんか要りませんよ」

 言いながら彼女は姉の行動に不信な物を感じ、彼女の周りをすたすたと調べ回る。

「な、何よ?別にあたし、やましい事なんかしてないわよ」

 ベッドの真ん中にちょこんと座ったままシーツを握り締め、必死にそれを隠そうとするフェリア。
 ファナはそんな姉から微かに漂って来る芳香に気づき、心底呆れたように呟く。

「姉様……また、したんですか?おねしょ」

「う……うるさいわよ………」

 目に涙を浮かべ、上目使いで妹を睨むフェリア。

「で、そのマッチはおねしょの隠蔽工作の為…という訳ですか」

「フェリア様、いいかげんにして下さい!おねしょする度にベッドを破壊されてはたまったものじゃありませんよっ!……この前はベッドが闇の暗黒時空に飲み込まれたとか言って後で裏庭でおねしょしたベッドの残骸を発見した時は目を覆いましたよ私は」

 勢いに乗じて反撃に転じるギルバート。
 こうした家具の度重なる損害でここ、フェリア邸の台所事情は火の車なのだ。
 その度に本家に仕送りの請求をせねばならず、このままこんな状況が続けば、彼の執事としての管理能力が疑われるどころか横領の嫌疑まで掛けられかねない。

「姉様、おねしょの度にそんな事いつもしてるんですか…心中ご察しします、ギルバートさん」

「いちいち喋る度に『おねしょ』つけてあたしの硝子のように繊細な心をナイフで抉るような真似をするな、お前等ぁっ!!」

 度重なる予想外の出費に心底苦悩している執事と、そんな彼を慰めている妹を泣きながら怒鳴りつけるフェリア。
 しかしその表現、想像するとキィキィ音を立ててうるさそうだ。

「大体何よ…あたしだって…したくてしてるわけじゃないのにそうやってみんなしてあたしの事笑い者にしてさ、酷いわよぅ……」

 言いながら嘘泣きではなく割と本気で泣いているフェリア。
 しかし二人の攻撃は容赦無い。

「体質とか先天的なものが原因でしたら私もそこまで言いませんけど、姉様の場合は明らかに自分が悪いんじゃないですか。昔から寝る前にトイレに行ってませんでしたし」

「そうなんですよ、昨日も暑いからってジュースをがぶがぶ飲んでましたし」

「うるさいうるさいっ!!」

「これはもうオムツでもさせるしかありませんかねぇ?」

「あははははは、それ、良いですねぇ、きっと似合いますよ、姉様」

「あんた等いいかげんにせいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 絶叫するフェリアをよそに、二人はしばらくフェリアのおねしょネタで盛り上がっていた。



「くっそぉ、ファナめ、姉を散々笑い者にしやがって、こうなったら復讐するは我にあり、絶対確実に恥ずかしい目に合わせてやる……といったもののどうしてやろうかしら…」

 その夜、フェリアは妹に復讐するべく計画を練っていた。
 しかし頭に血が上っていていつものように考えがうまくまとまらない。

「あーーっ、もう!!」

 ぼふっ

 ベッドに仰向けに倒れこむフェリア。

「もういいわ、あいつをとっちめる方法は明日考えるとして、今日はもう寝ましょ…」

 そのまま目を閉じ、意識はどんどん無意識の海へ……

 ブワサァ

 彼女の眠りを、風に飛ばされて部屋に入ってきた一枚の紙切れが妨げた。

「ぶぶっ…ぺっぺっ、一体なんなのよ、これぇ」

 眠りを妨げられ、更に不機嫌になりつつもフェリアはその紙を手にとってみる。

 読むにつれて、不機嫌だったフェリアの表情に邪悪な笑みが広がっていく。

「ふっふっふ、これは使えそうね…見てなさいよファナ、姉を怒らせたらどうなるか、その身をもって判らせてあげるわ」

 そして、闇夜にご近所迷惑な高笑いがこだました。



 続く

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