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  「西へ」 −バーシア アナザーエンド−             場面5

■ フェルナンデス  3月10日 安宿

しかし、平穏な日々はそう長くは続かなかった。
あの公園に行った日から2、3日後、ミサキが風邪をこじらせ、高熱を発したのである。
熱にうなされ真っ赤に顔を腫らすミサキ。
この子だけは…とバーシアとオレは必死に看病したが、抵抗力のない子供だ。
なかなか快癒せず、薬代とヤミ医者のぼったくり同然の診療代で、持ち合わせの生活費は、みるみる枯渇していった。
まだしばらく薬代も掛かりそうだし、無一文だと生活していくこともできない。
オレもバーシアも手配中の身であるゆえ、街中で大っぴらに働くことなどはできない。
そんなことでもすれば、てぐすね引いて待っている軍が喜び勇んで飛んでくるだろう。
それにオレ自身の薬代もある。
そんな苦境の中で、じっと一人で何か考え込んでいるバーシアの姿が気になってはいたが…

明日からの生活費もままならないと悩んでいたある日、バーシアが相談したいことがあるといってきた。
話の内容を聞いてみて驚いた。
明日からでも客をとるというものだったからだ。
客という意味を念のため確認したが、それはもちろん娼婦になるということだった。
当然オレは反対した。
しかしバーシアの意志は強固で、この数日間考えた末の結論だから許して欲しいと訴えかけてきた。
確かに現状ではそれくらいしか生活の糧を稼ぐ手が残されていないのは事実だ。
ほかに有効な手もないまま、ミサキが悪くなっていくのを黙って見ているわけにはいかない。
オレもミサキの面倒を見る義務があるからだ。
オレ以上に母親として接しているバーシアは、ミサキを見るたびに身を切るような痛みを感じていることだろう。
それにバーシアは言い出したら聞かないところもある。
それにミサキのためだから許してと頼まれたら…
しかし…しかしだ!
バーシアのためにも、そんな辛い思いをさせるわけにはいかないじゃないか!
だが結局半ば押し切られる形で、宿に金を持て余しているような客を招き入れることとなった。

それに許すも何も、言い出した本人が最も苦しんだはずなのである。
北で調教された体と性技を、このような形で利用するなんて、最も忌み嫌っていたはずの、己の淫靡な肉体に頼らざるをえないなんて、断腸の思いだったに違いない。
ミサキを助けるために己が身を犠牲にするしかないのだから…
何もできない自分が情けなかった。この壊れた半身が呪わしかった。

バーシアが客をとり始め、2週間が経過しようとしていた。
今日も、バーシアの元に客がやってくることになっていた。
肉に飢えた野獣のような男が。

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